土壌や水などの環境中に溶け込んでいる生物由来のDNAを環境DNAと呼びます。この環境DNAを分析することで、その場所にどんな生き物がどれだけいるのかを知ることができます。
このような環境DNAを用いた研究を行うには、遺伝子やゲノムなどの生物学の知識が必要ですが、同時に膨大な文字列情報としてのDNAを処理するために情報学の技術が必要となります。また、ある地点とある地点、ある時間とある時間を比べるためには、統計学の知識も必要です。 このような環境DNA分析を用いて、私はこれまでに、①やんばるの川の水を用いて、熱帯感染症の病原菌であるレプトスピラ菌がどのような動物と一緒に検出されるのか、②沖縄島沿岸の海水を用いて、微生物やプランクトン・底生動物の生物多様性が地点間でどれだけ違うのか、またなぜ違うのかといった研究を行っています。また、今年度からは新たに③人が入ることのできないサンゴ礁の内部にどのような生き物が生息しているのかの調査(これまでに発見されていないサンゴ礁魚類の餌生物やナマコの子どもがいるかもしれない)も始めました。
しかし、環境DNA分析によって、生物多様性がどのように違うのかを調べるだけでは不十分です。「なぜ違うのか?」に答えるためには、水質や気象条件といったより物理的・化学的な環境の情報も必要になります。私たちの目に映る、青い海や澄みきった川、青々とした森をデジタル化していくことで初めて、汚れた海やよどんだ川、汚染された森と比較することができるようになります。このような研究を通じて、健全な自然環境と、健康な人の社会との繋がりを探していきたいと思います。
環境DNA調査の様子
水山 克(人間健康学部 健康情報学科 准教授) 【人物紹介】 |