私は、ここ5年ほど、小学校英語授業の観察を行い、どの教員も素晴らしく、また児童も活発であり毎回、感動を受ける。しかし、19年間の沖縄県内公立中学校英語教員の経験と20年間の名桜大学英語教職課程担当の経験(2023年現在)を持っている私にとっては授業直後の感想は、単なる素晴らしい授業実践のひとつである。しかし、授業後に、観察録音データを何度も聞き直し、教師や児童の発話、活動のすべてを文字で書き記すと(文字起し)、どの授業も研究データの宝の山なのである。
「会話分析」の研究方法との出会いは、オーストラリアのウーロンゴン大学博士課程に2000年から2003年まで学んでいた時である。その当時、私の研究に対する概念は、難解な統計を駆使することであったが、生憎、私が所属した教育学部は統計の手法を否定する、いわゆる質的研究一色であった。必然的に博士研究は観察記録やインタビュー記録の膨大な文字起しから現れる新しい主題や概念などを中心にまとめた。
45分の英語授業を正確に文字起しするには10時間以上を要し、A4サイズで10枚から15枚程度の記録になり、根気がいる作業である。通常の英語授業の観察に加えて、過去3年間(2000年、2001年、2023年)は、獲得した外部研究資金を利用して、オンライン上で小学校と中学校の英語教員が模擬授業を行い(累計36人)、その模擬授業の録音データを週末に文字起しを行い、それを元にコメントを書き、Google Classroomで共有している。自然科学で日常に存在する事象が説明されてきたように(例: 重力や音速)、変哲も無い授業を「会話分析」の手法を用いて見つめ直すと、それぞれのコンテクストで「授業の目的を達成するため」に教師や児童が協働してさまざまな発話や行動をしている事がもっと見えてくる。
渡慶次 正則(国際学部 国際文化学科 教授) 【人物紹介】 |