私が大学院に進学したきっかけは、不妊治療後妊娠の褥婦と接する中で、漠然と「なにか」が異なる、その「なにか」を知りたいと思ったからです。不妊症を聞いたことはありますか。現在では、「子どもが欲しい」という個人の願いが、先端医療技術の進歩と費用の公費負担等の支援により叶えられる機会が増加し、日本の全出生児の16.7人に1人が高度生殖補助医療で誕生しています。
一方、不妊治療当事者たちは経済的負担のみでなく、仕事と治療の両立困難によるキャリアの中断を余儀なくされ、不妊退職による経済的損失は1345億円に上ると試算されています。WHOの調査によると、不妊の原因が女性のみの場合が41%、男性のみは24%、男女双方が24%、原因不明が11%となっており、不妊カップルの2組に1組は男性側にも原因があることが分かります。男性の場合は、先天性・後天性では、肥満や喫煙習慣、飲酒といった生活習慣病に関係する要因も精子の運動能力や産生力を低下させ、男性不妊の原因となります。女性側の問題としてとらえられがちな不妊症ですが、一緒に医療機関を受診して専門医に相談する必要があります。「プレコンセプションケア」というものをご存じでしょうか。女性やカップルに将来の妊娠のための健康管理を提供することとされています。妊娠・出産だけでなく、若い世代の男女が将来より健康になること。健康を意識した生活が送れるよう、思春期教育では、性と生だけでなく、男性不妊の話題提供もしています。皆さんも自分自身の生活習慣を振り返ってみませんか。後期科目の「ヒューマンケアリング」の講義是非聴講してください。
鶴巻 陽子(人間健康学部 看護学科 準教授) 【人物紹介】
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