近年はEDM♪ならぬEBPMという言葉が流行しています。自身の学位の名称は「博士(政策科学)」なので、このEvidence Based Policy Makingは何ら新しいものではありません。現状データや客観的な費用対効果のみならず、公共政策の規範ともなる住民の価値観という質データもEBPMであり、地域のビジョンや政策の立案、合意形成や政策決定時にも統計的信頼性がある地域住民意識は重要なエビデンスになり得るということになります。
このような考え方を自身の研究分野に関連させてみると、現在は「ヤンバル」と合意形成という二つのキーワードに関心を寄せています。NHKドラマ「ちむどんどん」では、北部12市町村を指すヤンバル地域に恩納村や伊江村などを含めず表示したのですが、沖縄県や北部12市町村の認識ではヤンバルが一体となっての観光連携を進めています。ヤンバルという言葉に関する共同研究は既に論文等で発表していますが、住民も観光者も認識がバラバラな言葉を使用しての観光連携は、行政の観光基本計画において地域の多くの組織が同じ方向を目指すのに何故か動きはバラバラという状況にも良く似ています。観光基本計画が形骸化し、いつまでも一体とならず連携も形骸化してしまう問題です。複雑な意識や意思を数量化し、ステークホルダー間の意識構造や関連性、重要度をもとに問題の意識構造を可視化してEBPMの観点からの合意形成支援が重要です。
地域における観光の合意形成支援については指導院生のテーマでもあり既に学会部会で共同発表していますが、これからも政策科学と観光研究を基本として地域のために、ある種の合意形成、そしてヤンバルという言葉の研究を通して、よりよい観光政策、地域連携という意味を探っていきたいと考えています!
大谷 健太郎(国際学群 観光産業教育研究学系 教授) 【人物紹介】 |