保健体育の先生は、"運動能力があればなれるのでは"と少しばかり思われているかもしれません(私自身が、大学生の頃まではそう思っていました...)。いいえ、そんなことはありません。保健体育の先生の専門性は、とっても複雑で高度なのです。私は、保健体育の先生の専門性の中でも"知識"に着目し、"保健体育の先生の知識とその養成"を大きなテーマに研究に取り組んでいます。
授業の中で、先生は教える"内容"に関する知識と、それを教える"方法"に関する知識と、"子供"自体に関する知識などを複雑に絡めながら、指導をしています。しかも、超瞬間的に。例えば、体育の授業で前転が苦手なAさんがいたとしましょう。この時、先生は前転のポイント(内容)とAさんの運動能力や個性(子供)と合わせて瞬時に"つまずき"を見つけ、それを解消するような適切な指導(方法)を行います。逆に、子供のつまずきを解消するような指導は、"内容"、"方法"、"子供"に関する知識がそれぞれ広く、深くなければ難しいでしょう。
近年、めまぐるしく変化する教育現場で質の高い教育を実践するために、教員養成の質の向上が求められています。その中で、私は"複雑で高度な先生の知識をいかに学生にも身につけさせることができるか"という点に課題意識をもっています。これまでの研究で、学生は"方法"に関する知識を身につけることはできても、"内容"に関する知識を深めたり、多様な"子供"に関する知識を広めたり、それらを複雑に絡めて実際に指導することに課題があるということが明らかになりました。素晴らしい教育ができる先生を育てられるよう、知識とその養成方法の探究、さらには新たな知識の創造を目指しこれからも研究に努めたいと思います。
濱本 想子(人間健康学部 スポーツ健康学科 助教) 【専門分野】 |