世界には、6000~7000の言語があるといわれていますが、日本の中でも琉球列島の言語的多様性は、きわめて目立ちます。2009年のユネスコの発表の前後から琉球列島でも言語的多様性に関するニュースが目立つようになってきました。
マルチリンガリズムという言葉は皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、ヨーロッパでは、言語教育に多言語主義(マルチリンガリズム)という考え方を取り入れてきました。この枠組みによって、市民が母語に加えて英語をはじめ、フランス語やドイツ語など複数の言語能力を獲得することが求められています。人の移動が活発になるにともない、言語教育は、個人の発展・教育・雇用などにともなった移動をより円滑にすすめるために大切なものと考えられてきたため、言語教育政策は、社会政策の大切な政策の一つととらえられます。最近では、複言語主義(プルリリンガリズム)という考え方があります。これは、すべての言語を平等に扱い、個人の言語能力に焦点を当てて、話者のもつ言語的レパートリーにも焦点を当て、ネイティブスピーカーを目指すのではなく、さまざまなレベルで複数の言語レパートリーがあることを肯定的にとらえるという考え方です。
琉球列島は、昔から話されてきた琉球列島の琉球諸語と呼ばれる言葉、そして、日本標準語、うちなーやまとぐちと呼ばれる言葉、そして、英語、さらにそのほかの外国語など多言語な環境があります。私たちは、もっと身近なところから、多言語主義、複言語主義を考えてもいいのかもしれません。多言語、複言語環境は、「他者」に出会ったときに違いを受け入れる受容につながります。それはもしかしたら、いちゃりばちょーでーという沖縄のことわざにも表れているのかもしれませんね。
半嶺 まどか(国際学群 国際文化教育研究学系 准教授) 【趣味】 |