世界のなかにある「日本語」
迫田(呉)幸栄(国際学群 国際文化教育研究学系 准教授)
私の研究分野は日本語学・一般言語学及びその研究成果が活かされた日本語(国語)教育(学)です。我々人類にとって、伝達の手段であるとともに、認識・思考の道具でもある言語そのものに強い関心をもち、語彙、文法、音声(音韻)、文字表記のなかでは文法について主に研究し、論文を書いています。一言で言ってしまえば、いわゆる文法屋です。一つの言語の習得には、語彙(単語)の蓄え(記憶)と文法(項目)の理解が必要であり、どの言語の研究においても文法の研究が欠かせません。
日本語の動詞はヨーロッパ諸言語と同じような複雑な語形変化システムを持っていることをご存じでしょうか。「する」(普通)に対して「します」(丁寧)、「する」(肯定)に対して「しない」(否定)、「する」(非過去)に対して「した」(過去)・・・のように、日本語にもドイツ語やロシア語のような「パラタイム(語形変化表)」があります。
名詞においても日本語では、文のなかであらわす意味とはたす役割に応じて「Nが」「Nを」「Nに」「Nと」・・・のように格助詞を取りかえながら使われます。 日本語を母語とする人にとって、ごく当たり前ように思える日本語の文法(現象)を世界でも通用する文法理論に従って、体系的にとらえて研究・整理し、最終的になんらかの形で(例えば、教材や文法書、辞書作りなど)言語教育に寄与するのが私の研究の目的です。
戦後、外国語との激しい接触のなかで、改めて日本語のシステムそのものをとらえ直す必要性に痛感した先学たちによって、「日本語学(国語学)」という分野が急速に発展してきました。高校まで習った「国語」とは違った見方で世界に存在する「日本語」という言語を確認するのは実にワクワクする楽しい作業です。
研究の土台となる二冊の本
2017年9月
迫田(呉)幸栄(さこだ(くれ)さちえ)(国際学群 国際文化教育研究学系 准教授) 台湾生まれの日系人三世。二つの文化を体に共存させているせいか、どうやら二重人格者的な部分も。二十代はイギリス、ドイツでの留学、ヨーロッパ諸国、エジプト、インドなどの旅を楽しんできた。いまは長らく暮らしている東京にない、どこか懐かしい幼少期を過ごした台湾の面影を沖縄で感じる。 |