スポーツ哲学って何だ?
大峰 光博(人間健康学部スポーツ健康学科 助教)
スポーツ科学の中に、スポーツ哲学という学問領域が存在します。読んで字の如く、スポーツを哲学の観点から考察する学問です。スポーツ科学といえば、運動生理学、スポーツ心理学、コーチング学、バイオメカニクスといった、プレイヤーのパフォーマンス向上につながる学問領域を思い描く方が多いと思います。しかしながら、スポーツ科学にはスポーツとはそもそも何か?スポーツにおいて許容されない行為とは何か?といったテーマを研究する領域である、スポーツ哲学が存在します。長い歴史を持っているとは言えませんが、「国際スポーツ哲学会」という海外の研究者が集まる団体が存在し、また日本においても「日本体育・スポーツ哲学会」が存在します。これまでに、少なくない研究成果が蓄積されています。
スポーツ哲学の領域では、昨今、大きな問題となっているドーピングについて論じられる機会もあります。また、試合におけるルール違反の問題、スポーツファンの問題、障害者スポーツの問題、さらには、スポーツにおける人種問題についても論じられています。私の主たる研究対象は、試合や練習中の暴力であり、具体的には意図的なルール違反や体罰になります。スポーツの闇の部分に焦点を当てた研究とも言えるかもしれません。しかしながら、哲学者の中島義道氏が指摘するように、哲学とは「人々が前提としている善悪の骨格を揺さぶる」営みです。毛嫌いされる可能性もありますが、スポーツに関して人々が前提としている善悪の骨格を揺さぶる研究に、今後も取り組んでいきたいと考えています。
2016年11月
大峰 光博(おおみね みつはる)(人間健康学部スポーツ健康学科 助教) 1981年生まれ、京都府出身、スポーツ健康学科、スポーツ哲学専門。 大学からトライアスロンをはじめ、現在、トライアスロンサークルの顧問を担っています。 サークルメンバーと練習を共に行うのが、日に日に苦しくなってきました。 また、最近は自身の京都色が薄まってきており、知人の京都弁に対して違和感を覚えるようになってきました。 アイデンティティとは何か?と考える機会が増えている今日この頃です。 |