経済政策のココロとは
経済学という言葉を聞くと、カネ勘定し、いかにカネを稼ぐかをだけを考えている金の亡者というイメージを抱く読者も多いのでは。 筆者が学生の頃、標準的な経済学のテキストがサムエルソンの『経済学』であった。サムエルソンは、いくつかの秘話がある。修士論文が、経済学の教科書になったとか、ハーバード大学の博士号の面接試験担当者の一人が、天才として名高いシュンペーターであったが、面接試験終了後、シュンペーターは、「まるで我々が面接を受けているようだ」と語ったとか、ノーベル経済学賞はサムエルソンのために創設されたとかである。 そのサムエルソンが、『経済学』の中で、単純な経済学者の逸話を戒めとして述べている。貧困国インドでは、無数の牛がエサを求めて国中を歩き回っている。無邪気な経済学者は、不十分な食事内容を改善するためタンパク源として牛を食べることを提案する。 ところで、経済学部では、経済学以外にも他の学問分野も同時に学ぶ。たとえば、法学、史学、哲学、数学、社会学、政治学、心理学などである。そのため、ウブな経済学者のような考えはしない。 さて、私の専門である経済政策の特徴は、実験や失敗の許されない学問である。経済政策や政策で失敗すると、万人の貧困者や被害者が路頭に迷うことになる。 実験的政策例は、アメリカの禁酒法がある。天真爛漫な政策例は、ある国、地域や大学で成功した政策や方策を、そのまま持ち込むような考え方や態度である。これらは、文化や経緯を考慮せず、無批判に導入・実践したのである。 国や地域は、歴史、文化、経済、社会や資源が異なるため、演繹的な方法でうまくいくことは希である。 経済学や経済政策の目的は、人々の安寧と幸福であり、マネーの動きを調査するのは、人々の経済活動や政策の評価基準の一つだからである。
宮平栄治 専門科目は経済政策ですが、失敗学も学んでいます。契機は、私の母親は、太平洋戦中、マリアナ諸島のテニアン島で九死に一生得て生還、小学校の恩師が、"ひめゆり部隊"の生存者だったことです。新しい学びは、日本が遅れている文化政策や都市設計の研究のため、ラテン語やフランス語も学び始めました。 |