オモロはおもろー?
尚家本おもろさうし(第3巻) |
フィールドワーク(辺戸岬から安須杜を望む) |
自己紹介の際に「オモロを研究しています」と言うと、過半数くらいの人たちはオモロってなんだろうという顔をします。ちなみに「オモロ」でググると、お菓子や泡盛、地名、そして一昔前に流行った、「おもろー!!!」と叫ぶ芸人などがヒットします。
僕が研究しているのは、16~17世紀に琉球国内で歌われていた神歌を首里王府が収集・編纂した古歌謡集『おもろさうし』で、オモロとは『おもろさうし』収載された神歌のことです。上記のお菓子や泡盛等の名前に付いているオモロは、大抵この『おもろさうし』からとったものです。
ちなみに上記芸人と『おもろさうし』とは無関係ですが、僕はオモロをおもろー!(面白い)と思っています。古い神歌であるオモロの、どこがおもろー!なのでしょうか。
例えば皆さんは「北谷」と書いてなんと読みますか。「きたたに」と読んでしまう人もいるかもしれません。これは「ちゃたん」と読みます。「絶対にそう読めない」「日本語ではない」と驚く県外出身者の方もいますし、実際、難読地名として挙げられる地名の一つです。
ところが『おもろさうし』では北谷について、「きたたん」と平仮名で表記されています。これは、かつて北谷地域のことを「きたたん」と呼んでいたということを示すもので、オモロ時代(16c前後)は「きたたに」に近い呼び方をしていたということが分かります。そして漢字もその呼び方にあわせ「北谷」と当てたものが、時代を経るごとにキチャタン、チチャタンなどと訛ってゆき、現在「ちゃたん」と呼ばれるようになったことがうかがえるのです。オモロも、そして琉球国も日本語文化圏であったことを物語るものでもあります。
ほとんど平仮名表記という『おもろさうし』の特徴の一つが、このようなことを明らかにする手掛かりとなっているのです。
『おもろさうし』のおもろー!な特徴は書き切れない程たくさんあり、自分の足元を掘り下げる楽しみ・歓びを日々味わっています。
照屋理(国際学群国際文化教育研究学系上級准教授) 生年:1975年。出身地:なんじぃで有名な南城市大里。所属:国際学群国際文化専攻。専門分野:『おもろさうし』を中心とする南島歌謡および琉球・沖縄民俗文化研究。マイブーム:辺野古の動向を見守ること。イシナーグーやチュンジーなど沖縄の昔の遊びに熟達すること。短距離走で若いヤツに勝つこと。腕相撲で若いヤツに勝つこと。 |