運動生理学のおもしろさ
奥本 正(人間健康学部 スポーツ健康学科 教授)
私の主な研究分野は運動生理学です。運動生理学とは、1回の運動や繰り返しの運動(トレーニング)を生体に与えたとき、あるいは与えないとき、体がどのように応答(変化)するのかを調べ、生体の機能を明らかにする学問です。例えば、椅子に座った状態から立ち上がった時、一時的に心拍数が上がります。立ち上がるという刺激を生体に与えると、心拍数が上昇すると反応が起こります。その理由を考えることによって、生体の機能が少しずつ解明されてきます。
現在、私が興味を持っている研究テーマは「生育暦の違いが運動時の体温調節反応に及ぼす影響」です。これは、選手を見ているトレーナーの方との何気ない会話がきっかけでした。沖縄で生まれ育った選手は、運動中、手のひらや足の裏から汗をかくと言われました。通常、手のひらや足の裏からの汗は精神性発汗といわれ、体温調節には関与しないと言われています。しかし、沖縄のように亜熱帯の環境で生まれ育った場合は、手のひらや足の裏からの汗も体温調節に関与し、発汗様相や能力が異なるのではと考えています。また、沖縄で生まれ育った選手は直射日光にあたると急激に発汗量が増加する現象も観察され、太陽光あるいは紫外線刺激が発汗に及ぼす影響についても研究していきたいと考えています。この研究は、沖縄にある名桜大学でなければできない研究テーマです。これらの研究を通して、暑熱環境あるいは寒冷環境下における沖縄の長距離選手のパフォーマンス向上に役立てればと思っています。
このように、スポーツの現場で観察されることを注意深く観察し、そこから仮説を立て、実験を実施し、生体の機能を少しでも明らかにして行きたいと思っています。
奥本 正 (人間健康学部 スポーツ健康学科 教授)
1967年生。奈良県橿原市生まれなので生粋の大和人。中学の時から陸上長距離が専門。「いかに少ない練習量で最大の効果を上げるか」を考え続け、それが講じて研究の世界へ。現在でも、年に3-4回フルマラソンを走っている。そのとき、心拍数だけでなく、直腸に温度センサーを入れて、直腸温(深部体温)を計測しながら走るという、データ採取オタク。50才までにサブスリーを達成するのが今の目標。
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図の説明
フルマラソン走行時の直腸温とラップタイムの変化。11月初旬の午前8時20分スタート。ゴール時には体温は40度近くまで上昇している。35キロから走行ラップが落ちているにもかかわらず、体温が上昇したのは、気温の上昇によるものと思われる。