ミイラ崇拝を研究することは、恐ろしい?
上原なつき(国際学群 国際文化教育研究学系 准教授)
私は人々が死、死者、死後の世界をどのように考えているかに興味があり、研究しています。
具体的な研究方法を説明しますと、私の専門分野は文化人類学で、ペルーのアンデス山地にある標高3,500メートルに位置する農村に滞在しながらフィールドワークを行っています。「死者の日」と呼ばれる日本のお盆のような祭りを観察したり、インカ帝国の時代まで墓地として使われていた洞穴や遺跡を訪ねて、そこに現在も安置されているミイラや人骨にまつわる話を村の人たちから聞き取りをしたりしながら、アンデスの人々が死や死後の世界をどう理解し、死者をどのように扱っているかということを調べています。
私がミイラ崇拝や死者について研究していると話すと、私の家族や友人は「気持ち悪くないの?」と尋ねてきて、オカルト趣味の変わり者なのかと私を訝しがります。
しかし、死について考えることは決して忌避すべきことではありません。もしかすると、医学と科学技術がさらに発達した未来には永遠に生きることが可能になるかもしれませんが、少なくとも現在のところは、遅かれ早かれ、人間には必ず死が訪れます。若い方々はまだ考えることはないかもしれませんが、今わの際で自らの人生を後悔すること、また、残した家族や知人に恨み言をいわれるような死後を迎えることを望む人は、おそらくいないのではないでしょうか。死や死後について考えるからこそ、翻って今生をどのように生きるべきかを、人間は真剣に考えるのだと思います。私がアンデス農村のミイラ崇拝や死者にまつわる話を研究しているのは、そのような人間の営みと思考を知るためです。
ちなみにフィールドワーク中の仕事の大半は、村の人たちと他愛もないおしゃべり(研究者にとっては実は重要な情報ばかりです。)をしたり、祭りの時には人々に勧められるままにチチャというトウモロコシ酒をしこたま飲んでダンスの輪に加わったりと、仕事とは思えない楽しいものです。
2014年4月
調査地の中学生たちと(中央に座っているのが上原) ペルー日系人協会での講演の様子(右から2番目が上原)
インカ期の遺跡にて
上原なつき (国際学群 国際文化教育研究学系 准教授) 国際文化専攻。那覇市出身。趣味はダンスと音楽鑑賞。ソウル、ファンク、ディスコ、R&B、90年代ヒップホップ、サルサなど、おもわず踊りたくなるような音楽が好き。ラテンダンスサークルにたまに出没する。 |