「人間同士の対話を観察したい」
中里収(国際学群 経営情報教育研究学系 教授)
私の研究分野は工学系の音声対話です。わかりやすくいうと、「ロボットが人間のように対話をするには、どのようなルールが必要か」という研究です。わたしだちが日常的に行っている音声対話には、ルールがあります。これは学校で習うわけではなく、日常生活の中で獲得されるもので、あまり意識しません。
例えば「話し手」役と「聞き手」役は、タイミングをはかり交代すること、「話し手」は話題を選び意味不明にならないようにすること。役割に応じた言葉を使い失礼のないようにすること。「聞き手」はあいづちをうち、対話がうまく進められるように協力することなどです。これらの対話のルールは「常識」と考えられ、明文化されていないので、研究者は「常識」のルールをひとつひとつ見つけていかなければなりません。
そこで、私は、まずはモデルとなる人間同士の対話音声をいくつも録音し、データベースを作り、分析してきました。名桜大学の学生にも今までいろいろな実験に協力してもらいました。ですから私は日常生活でも、人がどんな話し方をするのか、つい観察してしまいます。大学生がどんなことを話しているのかにも興味があります。
ところが最近は、教室でも、街中でも、若者たちが無言でコミュニケーションしている姿が目立ちます。スマートフォンなどの携帯端末を使っています。これでは対話の観察ができません。本人にたずねてみるとこれも「雑談」だったりします。「世の中変わったなあ」と感心はするものの、対話の機会、ルールを学ぶ機会が少なくなっているのではないかと不安を覚えるのも事実です。 キャンパス内で楽しそうに会話している学生の姿を見ると、安心するのは私だけでしょうか?
「コミュニケーションロボット『ゆんたくん』 「PCを用いた音声分析の様子」2013年8月
仲里 収 (なかざと しゅう)(国際学群 経営情報教育研究学系 教授) 1967年生まれ。東京都出身。経営情報教育研究学系。専門は「音声対話」「ヒューマンマシンインタフェース」。情報系科目の「コンピュータリテラシー」や「情報化社会論」などを担当しているものの、大学院(修士)の時に心理学を専攻していた関係で、「臨床心理学」や「気功法」の研究にも関わりがあるという「アナログな裏芸」を持つ。 |