人間健康学部健康情報学科の本村純上級准教授が、令和6年3月に大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程の博士号(保健学)を取得しました。
博士論文のテーマは「特定健診項目を用いたアルコール性・非アルコール性脂肪肝のスコアリングシステムの開発(Development of scoring systems for alcoholic and non-alcoholic fatty liver using the Specific Health Examination items)」でした。本研究で本村上級准教授は、特定健診の項目だけで脂肪肝のリスクをスクリーニングする指標を開発しました。非医療従事者でも簡単にチェックができる指標となっており、「脂肪肝のリスクを把握することで、ヘルスリテラシーの向上、食や運動などの生活習慣の改善につながればと期待している」としています。
学位記を手に学長訪問を行いました
本村上級准教授に、学位を取得された喜びの声とともに、研究への想いを語っていただきました。
「学内外の業務をこなしながら論文を3本執筆し、さらに博士論文を執筆することは困難を極めました。博士号取得まで多くの時間と労力を要しましたが、なんとか取得することができて、今はとにかく安心しています。
さて、今回の研究について少しお話しします。
肝臓がんまでの大まかなプロセスとして、①健康な肝臓、②脂肪肝、③肝硬変、④肝臓がんがあります。本研究で開発したスクリーニング指標により、③肝硬変や④肝臓がんの前の状態、②脂肪肝のリスクが高いかどうかをチェックすることが可能です。一方、現在、国内外の医療機関で活用されているスクリーニング指標(FIB-4 index等)は、あくまでも肝生検(③肝硬変や④肝臓がんの確定診断のための検査)が必要かどうかを検討するためのスクリーニング指標です。
また、今回開発したスクリーニング指標の特徴は、医療従事者はもちろん、非医療従事者も特定健診の結果を見ながら、②脂肪肝のリスクが高いかどうかを簡単にチェックすることができる点です。必要なものは特定健診の結果とこのスクリーニング指標(チェックリスト)のみで、インターネットに接続したPCやスマホも不要です。このような指標はこれまで国内外に存在しませんでしたので、世界初の試みとなりました。
さらに、②脂肪肝のリスクが高いかどうかを把握することのメリットは、①健康な肝臓に戻せるチャンスが得られる点です。たとえ②脂肪肝のリスクが高く、その後仮に腹部エコーを受けたとして、②脂肪肝が判明したとしても、②脂肪肝の段階であれば、生活習慣を改善することで①健康な肝臓に戻せる可能性があります。一方、③肝硬変や④肝臓がんは不可逆的な状態ですので、これらの疾患になると、その前の状態、すなわち、②脂肪肝または①健康な肝臓に戻すことは非常に困難です。したがいまして、今回開発したスクリーニング指標により、②脂肪肝のリスクを把握し、そのリスクが高いのであれば、生活習慣の改善に取り組み、①健康な肝臓に戻す(または近づける)ことで、③肝硬変や④肝臓がんの予防に努めることができます。
今後はこのスクリーニング指標を算出し、その人に合わせた生活習慣改善のアドバイスをいつでも閲覧することができるスマホアプリを開発したいと考えております」
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