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英語圏コース
英語圏コース総評
平成30年8月31日(金)から9月16日(日)まで17日間、3年生3人がオーストラリアのウーロンゴン市とシドニー市で現地実習を行いました。実習は、基本的にウーロンゴン大学で午前中は語学学校で母語教師から英語を学習し、午後は様々なフィールドワークを行い、週末はウーロンゴン市郊外に出かけるという内容でした。
ウーロンゴン市でのフィールドワークで印象的な活動について述べます。Smiths Hills Schoolでは、11年生の日本語クラス(約12人)を訪問し、グループ発表の中に加わったり、オーストラリア人学生の日本語スピーチの審査員を務めました。Keira Demonstration Schoolでは、1年生のクラス(約15人)を訪問して、簡単な日本語でのあいさつと折り紙を教えましたが、模擬授業の経験もなかったので四苦八苦していました。日本語を外国語として教えることを通して、貴重な教える体験になったようです。折り紙については、事前に北山高校の姉妹校の米国高校生に折り紙を教える体験を「地域文化演習」で行っていました。しかし、同じ英語母語話者でも小学校1年生に英語で折り紙を教えることは難しい経験でした。訪問を終えた後の学生の安ど感が苦労を表していました。
学生の話題の中心は、ホストファミリーとの出来事でした。日本とは異なり、自家用車を持っていないので、大学のキャンパスからホストファミリーの家まで無事に到着することが1週間目の課題でした。ホストファミリーとうまく英語で話ができない、ホストファミリー先で食事が十分に摂れず、「お腹が空いた」といつも話していたことが良い思い出となっています。一方、ホストファミリーの「カメカメ攻撃」で振る舞われた食事を断れないなど、沖縄と似たようなもてなしを受けた学生もいました。
あっという間に過ぎた現地実習でしたが、学生は一様に振り返り英語で"I want to practice speaking in English."と述べました。「鉄は熱いうちに打て」と言われます。実習に参加した皆さんの今後の成長を期待します。
総評:渡慶次正則(国際文化教育研究学系 教授)
現地の学生と交流
UOW-Collegeの教員やクラスメイトと
Stanwell Parkでハンググライダーを背景に
座学や観光とは違う現地実習の魅力!
上間彩椰(語学教育専攻3年次、沖縄県立北山高等学校出身)
私はオーストラリアのウーロンゴン市内の家庭にホームステイし、オーストラリアの人々がどのような文化、考えを持ち、どのような暮らしを送っているのか、座学や観光で来ただけでは分からないことを現地実習を通して学びました。
実習中は、午前中に名桜大学の協定大学であるウーロンゴン大学の語学学校で英語学習を行い、午後はウーロンゴン市内を回っているフリーバスに乗ってフィールドワークに赴きました。フィールドワークでは現地の小学校や高校で授業を見学したり、生徒に日本語の挨拶を教えたり、英語で折り紙を教えて、一緒に折ったりして交流を行いました。また、大学の敷地内にあるアボリジニセンターでアボリジニの子孫であるジョシーさんにセンター内を案内してもらい、アボリジニのアートや歴史、現在のアボリジニの状態についての話を聞かせてもらいました。アボリジニに対する差別は減りつつあるけれど、これまでの歴史が作り上げてきたアボリジニの不利な立ち位置を解消するのは難しいという話を聞き、アボリジニの問題は簡単に解決することのできない根深いものだということが分かりました。
現地実習は語学教育専攻の学生にとっては必修のものではありませんが、本場の英語と文化に触れることのできる、またとない機会です。行く前は長いと思った2週間も、過ごしてみると本当にあっという間で、帰りたくないと思うくらいでした。現地実習は絶対に参加する価値のあるものなので参加しようか迷っている人はぜひトライしてください!
フィールドワークで一緒に折り紙を折りました
ウーロンゴン市Mt.keira Outlookでのスナップ
現地の野生動物とのふれあい
国際協力コース
国際協力コース総評
平成30年度の現地実習国際協力コースでは、国際文化専攻3年次7人と語学教育専攻3年次5人の計12人の学生が、夏休期間中にそれぞれ2~3週間の実習(インターンシップ)」を経験しました。平良舞衣さんと比嘉太さんが「国際協力機構(JICA)沖縄センター」、大城楓さん・幸喜莉沙さん・竹内亜里紗さん・田中佑未子さん・千田義孝さん・渡嘉敷竜希さんが宜野湾市の「沖縄NGOセンター」、大庭里美さんが東京都の「NPO法人アクション」、川野優奈さんが同じく東京都の「シェア=国際保健協力市民の会」、神陽花里さんが青森市の「青森県国際交流協会」、森下彩乃さんが福岡市の「福岡県国際交流センター」にて、それぞれインターンシップを実施したしました。
参加学生はそれぞれの受入れ機関で、国際協力や発展途上国援助や国際交流に関係する実務の補助を行ったり、職員、海外研修員、その他交流した方々から貴重な実務体験談を聞いたりしました。こうして、本学での座学で学んだ「理論」や「知識」を、国際協力や援助の現場での「実践」と「体験」を通して確認し再学習する貴重な機会を得ました。また、実習期間中は、国内外での英語による職務を体験したり、講習会や研修の運営補助をしたり、さまざまな国籍を持つ方々と交流したりもしました。こうした経験を通して、英語やその他の外国語でのコミュニケーション能力、ICT活用技能、及び異文化理解の大切さを再認識し、そうした技能を学生時代に習得する意欲を大いに高めたようです。
本来なら、それぞれの受入れ機関での実習内容を詳しく紹介すべきところですが、字数制約のため、ここでは一例のみ紹介します。カンボジア、東ティモール、日本での保健医療支援活動を展開する国際保健NGO「シェア」でのインターンシップを経験した川野優奈さんは、主に東京都でのHIV感染者の人権擁護活動に参加しました。具体的には、HIVとAIDSについての基礎知識(感染経路、予防方法、治療方法)に関する講習会で学んだり、HIV感染者やAIDS患者に対する差別や偏見をなくすための活動に参加したり、コミュニティーでのコンドーム配布による感染予防活動など、シェアが東京都で展開する保健医療支援活動に参加しました。川野さんは、地域社会や職場におけるHIV感染者やAIDS患者に対する根深い差別や偏見の存在を認識するとともに、こうした問題に取り組むNGOの草の根活動の大切さを強く実感したようです。
最後に、ご多忙にもかかわらず本現地実習国際協力コースの趣旨をご理解いただき、本学学生のインターンシップを快くお引き受け頂いた県内外の各受入機関の担当者各位に、心より感謝の意を表します。皆様の丁寧なご指導ご支援のおかげで、参加学生は多くのことを学び、卒業後の進路を設計するための大変貴重な示唆を得たようです。
総評:高嶺 司(国際文化教育研究学系 教授)
JICAでの実習を終えてー働くとはどういうことか
比嘉太(国際文化専攻3年次、沖縄県立小禄高校出身)
私は8月27日(月)から9月7日(金)までの10日間、浦添市にある独立行政法人国際協力機構(JICA)沖縄センターでインターンシップをさせていただきました。JICA沖縄様から沢山のプログラムを提供していただき、実習内容はとても充実したものでした。
中でも印象的だったものは、海外研修員へのインタビューと大学生が企画する「国際協力に関するイベント」作りでした。JICA沖縄では、技術協力などのために海外から多くの研修員を受け入れており、実習プログラムの中で彼らにインタビューをする機会をいただきました。私と琉球大学の学生2人はモザンビークから障がい者支援についての研修に参加されている方にインタビューをしました。インタビューを通して途上国が抱える問題やなぜJICAに研修に来たのか、海外から日本はどう見られているのかなどを知ることができ、貴重な体験を得られました。
イベント企画のプログラムでは、同じ名桜大学の学生と協力し、実現可能なイベントを企画することができました。イベントを考えるにあたってたくさんの意見交換をすることができ、有意義な時間を過ごすことができました。私は実習に参加するまで「働く」ということのイメージを持てずにいました。そのため、自分が興味を持っている、「国際協力」について知識を深めるという目標を立てて実習に臨みましたが、いざ参加してみると、想像以上の収穫や経験を得ることができました。
今回のインターンシップを通して、社会人に必要なスキルとして「コミュニケーション能力」、「主体性」が特に重要であることが分かりました。これからの大学生活ではイベントに積極的に参加し、講義などで他学生、先生と言葉を交わす中でコミュニケーション能力を磨き、何事にも失敗を恐れずに挑戦することで主体性を身に着けていきたいと考えております。今回貴重な体験をさせていただいた、河崎所長をはじめJICA沖縄の皆様、JOCAの皆様、本当にありがとうございました。
パネルを背景にJICAで記念撮影
「相手の価値観を柔軟に受け入れて」
幸喜莉沙(国際文化専攻3年次、沖縄県立読谷高校出身)
私は、宜野湾市にある「沖縄NGOセンター」で2週間のインターンシップをさせて頂きました。私たちインターン生はJICA開発教育事業、レッツスタディー事業、NGO相談員事業の3つのグループに分かれてそれぞれで活動を行いました。
私が特に印象に残っていることは2つあります。1つ目は、JICAで行われた指導者養成講座に参加したことです。この講座は教員向けに開催されており、沖縄各地の教員の方々が参加していました。私はその中の沖縄移民のワークショップに参加し、教員の方々とアイスブレイキングやグループになってフォトランゲージをして交流しました。このワークショップを通して、個々人の沖縄移民についての考え方を知ることができ、自分と異なる捉え方に気付かされたので視野が広がる良い機会になったと思います。2つ目は、沖縄県内に拠点を置くNGO団体にインタビューをしたことです。私は、カンボジアの学生を対象に奨学金支援を行っている「カンボジア沖縄友好の会」にインタビューをしました。実際に団体の会長とお話をさせていただいて、団体の事業内容や今後の展望の他に、団体を設立する以前はどのようなことをしていたのかなどを聞くことができ、国際協力には様々な在り方があると学びました。
私の中で国際協力は現地に行ってボランティア活動を行うことだと思っていましたが、教員向け講座を開催したり、悩んでいる人の相談に乗ったりして国際協力やNGOについて学びたい人のサポートすることも立派な国際協力であると感じました。さらに、一方通行にならないことを常に心がけ、相手の価値観を柔軟に受け入れて共有することも大切だと学びました。沖縄NGOセンターのコンセプトである「私が変わって、社会が変わる」とはまさにこのことだと思います。
今回のインターンシップで学んだ知識や経験をこれからの学校生活や就職活動に活かし、今以上に自分が成長できるよう努めていきたいと思います。
民俗衣装を着て。NGOセンターにて
東アジアコース(台湾・タイ・香港)
東アジアコース(台湾・タイ・香港)総評
今年で5回目となる東アジアコースは、平成30年9月10日(月)~9月24日(水)の15日間をかけて、台湾、タイ、香港をまわりました。参加学生数は9人でした。
語学研修は、国立台湾師範大学で3日間の実践中国語講義を受けました。専門家による特別講義は、中央研究院近代史研究所の林泉忠副研究員から、台湾のアイデンティティに関する講義を受けました。また、中琉文化経済協会を訪問し、陳華黛秘書、蔡本源理事、蔡雪泥名誉会長からの歓迎を受けました。台湾大学卒業生で翻訳家の吉田智子さんからは、海外で働く面白さに関する講義をしていただいたほか、台北二二八記念館、中正記念堂、明石元総統墓地跡などを訪れました。協定大学の開南大学では「琉球語講座」を実施し、学生との交流を行いました。
今年は諸事情により東南アジアコースが実施されなかったため、タイ国北部(チェンマイ~チェンライ)も訪れました。チェンマイ大学では、日本研究センターの若曽根了太講師による日タイ関係に関する特別講義のほか、日本語や歴史を学ぶ現地学生との交流を行いました。また、中国国民党の残党が形成した、ミャンマー国境に接する山岳地帯に位置するメーサロンも訪問し、段希文将軍陵園や泰北義民文史館も訪れました。
香港では、日系企業の現地事務所を訪問したほか、王海傑先生による沙田ウォーキングツアーで香港の古い街並みと歴史を学び、呂明才中学の学生たちと交流しました。
今回の実習では、台湾を中心として、東アジアと東南アジアをつなぎ、今も生き続けている中国現代史について学ぶ内容が大きな特色でした。タイのメーサロンでは、蒋介石による「大陸反攻」の指令を待ち続けるも実現せず、武装解除をしてタイに帰化することとなった中国出自の方々のお話をお聞きすることができ、貴重な経験となりました。実習にご協力いただいた多くの方々に心からの感謝を申し上げます。
総評:菅野 敦志(国際文化教育研究学系 上級准教授)
チェンマイ大学 若曽根先生・学生との交流(タイ)
開南大学での琉球語講座(台湾)
中琉文化経済協会 蔡雪泥名誉理事長と(台湾)
「自発的・積極的に新たな知識を得る実習」
國吉日彩(国際文化専攻3年次、沖縄県立糸満高校出身)
私が本コースを選択した理由は、身近な東アジアの国々をまだ一度も訪れたことがなかったからです。実際に現地に訪れてみると、実習以前の印象と違い、日本よりも発展しているのではないかと思えるほどで、とても驚きました。
台湾では師範大学での中国語講座、開南大学との交流、中琉文化経済協会訪問等がありました。特に林泉忠先生による特別講義では、台湾と近い境遇である沖縄のアイデンティティを問い直す貴重な機会になりました。タイでは、チェンマイ大学訪問や、国共内戦の末に国民党軍によって形成された村であるメーサロン、そして様々な史跡を訪れました。タイも想像以上に発展しており、料理も美味しく、このまま住んでいたいと思えるほどでした。香港では、企業訪問と香港在住の社会人の方々からの講話、沙田の歴史散策ツアーがありました。呂明才中学の学生交流では、3ヵ国語を話せる学生や、まるで大学生のように研究室で工学系の実験をしている学生など、香港と日本との意識の差を感じました。最終日には香港からフェリーでマカオにも行きました。
個人での旅行とは異なり、現地実習では自発的・積極的に情報を得ることで、観光では見つけられない新しい知識を得ることできたと思います。今回のように、2週間で4つの国・地域をまわる経験は貴重であり、実習プログラムの内容も濃く、歴史や文化だけでなく多くのことを学べる非常に有意義な実習でした。
メーサロンの泰北義民文化史館
香港現地日系企業訪問
タイのワット・ロンクン
東アジアコース(韓国)
東アジアコース(韓国)総評
今年の海外実習は2018年9月9日(日)から19日(水)まで行いました。総勢の7人の学生で釜山から韓国入りし、慶州・ソウルなどを経由し、仁川から日本に戻るようにコースデザインしました。研修のテーマは「分断と葛藤」とし、過去の戦争や紛争の戦いの生々しい現場を回り、今日の視点で吟味することに意義をおきました。
釜山の姉妹校の釜慶大学では、張先生から「越境することの意味」について講義をしてもらい、夜には現地の学生と楽しい交流会を催してもらいました。研修の前半部は前年度のコースと同様でしたが、後半は今回のテーマに沿った形で、平澤と安養が加わった形でした。
平澤市には第2海軍司令部があり、ここには2010年3月に、北朝鮮軍の魚雷攻撃を受け真っ二つに折れ沈没した772艦艇が展示されています。本学の学生と同じ年齢層の兵士46人が戦死した終わることのない悲劇の現場を見て、しばらく言葉を失いました。写真で紹介されている一人の兵士の体の中からは、北朝鮮軍の兵士が放った銃弾と砲弾の破片が3kgも見つかったといいます。日本ではなかなか見ることのできない現在進行形の「戦争」を間接的に体験したと思います。
展示されたところが海軍司令部の中であることと観光地でもないため、海軍司令部までの移動は一般のバス利用でした。そのため、予想外に時間がかかり、見学申し込み時間より90分以上も遅れてしまいました。しかし、「日本から勉強のために来た」旨を説明したところ、特段の配慮をいただき、特別に車両まで出してもらって回ることができました。帰り道、途中に立ち寄った安養市の「多文化通り」には、中国、北朝鮮、ウズベキスタン、モンゴル、カンボジア、サハリンなどからの移住民が作り上げた一角があり、韓国という新天地でたくましく暮らす庶民たちの姿に学生たちも感銘を受けたはずです。この賑やかさも平和あってのことなのだと、学生にとって改めて「戦争と平和」について考えるきっかけとなりました。
総評:李 鎭榮(国際文化教育研究学系 教授)
釜慶大学の前にて
刺激的な11日間でした
大塚 大(国際文化専攻3年次、静岡県・静岡北高校出身)
「旅」というワードを目にしたとき、あなたは何を思い浮かべますか?
現地実習東アジア(韓国)コースは韓国の歴史文化に触れるだけの「旅」ではありません。自分自身の成長を感じる「旅」であると思います。
このことを強く感じたのは、2010年に北朝鮮からの攻撃の被害に遭った、韓国海軍の軍艦天安を見たときです。現地スタッフの方の説明を聞いたのちに、実物を見ました。そのときの恐ろしさと興奮は日本にいては味わうことができないと思います。あれほど大きな構造物をいとも簡単に破壊する兵器の恐ろしさ。天安は犠牲になった46人の若い兵士たちの悲痛な叫びを今に伝えているように感じました。
これを機に戦争と平和についてより深く考えるようになりました。また、歴史事実を知らない人とは一線を画した物事の見方ができるようになったと思います。
現在「韓国のマチュピチュ」と呼ばれ、観光地として人気の高い甘川洞文化村から、歩いて五分ほどの峨嵋洞碑石文化村を訪れました。この地区のいくつかの家の基礎は、日本人の墓石によってできています。現地実習中において一番の衝撃を受けました。何も知らない人ならそこで驚くか、非常識だと批判的にとらえ通り過ぎてしまうかもしれません。しかし朝鮮戦争により釜山まで追い込まれ、住む場所も資材も無かった当時の人たちのことを考えると、やむを得なかったのではないかと思いました。
衝撃に衝撃を受け続け、自分の思考の極地に達し、疲労すらも快感に変わった刺激的な11日間でした。現地実習でできた日焼け跡が、妙に誇らしく見えました。
慶州市 世界文化遺産仏国寺前にて
釜山 釜慶大学 学生との交流会
ソウル 西大門刑務所歴史館
日本コース
日本コース総評
今年の現地実習日本コースは、平成30年9月13日(木)から26日(水)の13泊14日で実施しました。参加学生は8人、主な実習地は山口・京都・東京でした。
まず、福岡県の門司から関門トンネル人道を通って山口県の下関に入りました。下関は朝鮮王国からの使者(朝鮮通信使)が上陸したり、幕末には四国艦隊による砲撃事件があったりと、日本と外国との関係史を考える上でも重要な地です。下関の翌日には萩に行きました。萩は古い城下町の形を感じることができる場所で、江戸時代の人々の暮らしを想像しながらまわりました。
京都では、幕末に起きた出来事を学びながら伏見を回ったり、智積院会館という宿坊に泊まって朝のお勤めを見学したりしました。また、奈良県の三輪では「山の辺の道」を歩き、昔の人々の旅路に思いを馳せました。
続く東京では、昨年度まで名桜大学に勤務されていた山田均先生(武蔵野大学)のご案内で湯島や御茶ノ水を歩き、江戸の歴史に触れました。
実際に史跡を訪れ、その地を歩き、地形や距離感を知ることで、これまで講義で学んできた日本の歴史を身近なものとして感じることができたのではないでしょうか。
また、今回の現地実習では、国際日本文化研究センター、東京大学史料編纂所という二つの研究機関を訪問させていただき、古文書や絵画について学ぶ機会に恵まれたこと、俳人の安里琉太さんのご指導のもとで俳句の吟行会を行ったことも印象的でした。出版社を見学し、社員の方の話をうかがうことができたことは、本や出版に関わる仕事に興味をもっている学生にとって有意義な時間だったようです。寺社や城跡などの史跡をめぐるだけではなく、様々な形で日本の歴史・文化に触れることができた二週間で、私にとっても楽しい時間でした。
この二週間、たくさん歩きましたが、弱音を吐かずに実習をこなした学生の皆さん、お疲れ様でした。実習に協力してくださった訪問先の皆様、一緒に引率してくださった沖縄コースの照屋理先生、ありがとうございました。
総評:屋良健一郎(国際文化研究学系 上級准教授)
日本の『謎』を追求する
髙杉 寅太郎(国際文化専攻3年次、青森県立青森中央高校出身)
私たちは現地実習日本コースの学生は、準備学習として普段から主に日本の歴史や文化に関する古典の読み解きを行なっています。古典といえば堅苦しいイメージが湧くでしょう。しかし、当時の庶民の生活を掘り下げ、現代の生活と比較するには欠かせないものです。そうした座学を踏まえて本土へ赴きました。
実習内容は、神社や寺院で参拝したり、一般見学が難しい施設で古文書や国宝を見学したり、山奥の史跡へ向かったり、句会を開いたり...と盛りだくさんでした。おかげで毎日約10km歩き、車社会の沖縄県ではありえない歩行距離を達成しました。
大人しくて内向的なメンバーが集いましたが、蓋を開けてみると皆、個性的であり興味のある分野に特化しています。
京都府の智積院という寺院に宿泊した際、朝のお勤めがあり午前6時には本堂で正座をしながらひたすらお経を聞きました。コース内では「煩悩の塊」と揶揄される私ですが、足を一度も崩さず無心の状態を保ちました。
史跡を巡ると、どのような戦術を用いて軍を城を守っていたのか考察できます。例えば山口県の萩城は、堀と投石によって敵を寄せ付けない鉄壁のガードを誇っていました。
国際化が発展した昨今、日本には多くの外国人が足を踏み入れています。再来年には東京オリンピックが開催予定です。日本の慣習や文化は客観的にみると奇怪であり、魅力的でもあります。私たちは自国のことに関して、より見識を広める必要があります。後輩のみなさんにも、普段の生活ではなかなか気づかない、日本という国のおもしろさに興味を持っていただけたら嬉しいです。
からくり時計の前にて
お菓子処で小休憩
和布刈神社で記念撮影
沖縄コース
沖縄コース総評
平成30年8月27日(月)~9月9日(日)までの期間、現地実習(沖縄コース)を実施しました。
奄美諸島地域では、奄美大島(後述)および喜界島を巡検しました。喜界島では八月踊り保存会(会長生島氏)と芸能交流をし、琉球文化と日本文化の邂逅を、伝統芸能を通して体感しました。沖縄諸島地域では大宜味村塩屋にて国の重要無形民俗文化財「塩屋のウンガミ」を見学、男子は神へ奉納する沖縄角力にも参加し、江戸相撲とは異なる闘技文化を体験することができました。宮古地域では地域の史跡について伝承話等を参考に巡検し、八重山地域では、琉球国時代に周辺の島々へ水を供給する役割を果たしていた西表島にて、代表的な滝や水源を実見しました。
最後に奄美大島での実習について触れておきます。大島では、幕末に活躍した女性歌人笠利鶴松の碑(在笠利町)を訪れました。笠利鶴松は即興で琉歌を詠み歌う名人であり、不埒な薩摩役人を歌で以て撃退した女傑としても伝えられています。彼女の残した歌については複数の報告や研究がありますが、従来取り上げられてこなかった歌を発見し、卒業論文としてまとめるなど、笠利鶴松について目覚ましい研究をした卒業生の濱脇愛花さん(照屋ゼミ平成28年度卒業)に依頼し、笠利町まで来てもらって解説をしてもらいました。濱脇さんは文献を渉猟するのみならず、地元の関係者20人余りにインタビューしており、その成果を盛り込んだ論文はかなり質が高く、今回の説明にもその研究成果が反映され、受講生たちに大きな刺激を与えるものでした。
濱脇さんのご家族にはまた、ご自宅へお招きいただいて奄美名物の鶏飯を、引率教員ふくめ17人全員に振舞っていただきました。濱脇さんのお陰で例年以上に有意義な実習となり本当に感謝の念に堪えません。ここに特筆しておきます。
最後に猛暑の中、ご引率いただいた嘉納英明先生、屋良健一郎先生に感謝申し上げます。
総評:照屋理(国際文化教育研究学系 上級准教授)
奄美大島、笠利鶴松の碑にて
足元を掘り下げる
池原愛麗(国際文化専攻3年次、沖縄県立読谷高校出身)
今回、沖縄コースの現地実習で奄美島、喜界島、宮古島、石垣島、西表島の琉球文化圏の島々と本島北部の大宜味村に行きました。これらの場所で「足元を掘り下げる」をテーマに琉球文化や歴史の調査をしました。「足元を掘り下げる」とは、私が自分の地域にはどのような文化があるか、またこの文化はどのようにしてできたのか、どう受け継がれているかなどを知ることで、自分のアイデンティティを発見することができることを言います。
現地実習を終えて、沖縄に関する知識が増えていきました。今まで生活してきた中での小さな疑問や、習慣が琉球文化と関わりがあることがわかり、また、身近には感じない琉球文化が、ある地域では残っていることがわかりました。特に印象に残っているのが、喜界島での交流会でした。鹿児島県という沖縄ではないこの地域で、どこか馴染みのある雰囲気や言語が聞こえ、不思議な感覚になったことが忘れられません。今まで琉球文化を意識せず生活してきましたが、実習での新たな発見により、沖縄に対しての視野が広がりました。
私は沖縄だけでなく世界中で活躍できる人になりたいと考えています。世界を見る前に自分の足元を掘り下げて物事を考えていきたいです。そうすることで他の地域を訪れたときに、自分の地域とは異なる文化や習慣を比較でき、似たところがあれば分かち合えると思うからです。
現地実習を通して得られることは様々あります。インターネットで調べるのは簡単ですが、現地を訪れないと体感できないことがたくさんあります。これから現地実習に参加する皆さんは、自分なりの発見や成長を見つけられるように頑張ってください。
宮古まもる君と記念撮影
西表島トレッキングツアー
石垣島の世界チャンピオン
中南米スペイン語圏コース
中南米スペイン語圏コース総評
2018年9月1日から9月18日までの18日間、参加学生4人、引率教員1人の計5人でメキシコにて実習を行いました。最初の一週間はクエルナバカ市でスペイン語クラスを受講し、メキシコ人家庭でホームステイをしました。受講前は不安そうだった学生たちも、学習した単語やフレーズをホストファミリーとの毎日の会話で積極的に使用し、徐々に会話を楽しめるようになっていました。
2週目は首都メキシコシティに移動し、協定校であるメキシコ国立自治大学の学生との交流会を行いました。メキシコ国立自治大学には現在3人の本学学生が留学しているので彼らにも合流してもらい、日本語を勉強しているメキシコ人学生たちとスペイン語と日本語でゲームをしたり、本学学生がスペイン語で各自の出身地を紹介し、現地学生からの質問に答えたりといった言語交流を実施しました。
メキシコ独立記念日前夜の9月15日には、メキシコ沖縄県人会会長である高良ヒデキ氏のご自宅にお招きいただき、私たちの歓迎会および独立記念パーティーに参加させていただきました。テーブルにはトウモロコシ粉を練って蒸したタマーレスやサボテンのサラダなど様々なメキシコ伝統料理が並べられ、学生たちは初めて食べる料理や食材に感激していました。また別の日には、テオティワカン遺跡やテンプロ・マヨール遺跡などを見学しました。その巨大さ、精巧な石彫り、正確な天文観測の技術は息をのむほど素晴らしいものでした。
その他にも、街なかに多くのホームレスがいたことは学生たちにとって衝撃だったようです。中南米諸国のなかではメキシコ経済は比較的安定しているほうではありますが貧困や麻薬組織などさまざまな社会問題を抱えており、このような現状は本やニュースでは実感できなかったと思います。学生たちが今回の現地実習で感じたことや疑問に思ったことが今後の学習や卒業研究などにつながっていくことを願います。
上原なつき(国際学群国際文化教育研究学系 准教授)
ホストファミリーとの食事会
メキシコ国立自治大学での交流会
メキシコ沖縄県人会会長宅での歓迎会
体験しなければ分からないこと
田中 恵(国際文化専攻3年次、愛知県・名古屋経済大学市邨高校出身)
私の夢は子供たちに平和教育をすることです。それなのに私はこれまで海外に行ったことがなく、世界を何も知らないのにこのような夢を持っていることを少し恥ずかしく思っていました。そこで、1年の時に講義で学んだスペイン語を生かして、思い切って中南米まで行ってみようと決心し、スペイン語圏コースを選択しました。
メキシコに行く前にインターネットで調べてみると、「治安最悪」「世界一殺人事件が多い国」などと書かれており、不安になりました。確かに治安が悪い地域もあるかもしれませんが、実際にメキシコを訪れて、そのイメージはガラッと変わりました。私たちはメキシコで一生忘れられないような素敵な出会いや体験をたくさんしました。クエルナバカではホームステイをしながら語学学校に通い、スペイン語の力をつけ、ホストファミリーとメキシコの生活を体験しました。メキシコでは、日本人がお米を食べる感覚でトルティーヤを食べるので、そんな食文化も非常に興味深く、生活スタイルの違いにも驚かされながら毎日ワクワクして過ごしました。(友達は「もうトルティーヤは見たくない」と言っていましたが...。)
メキシコシティに移動してからも、テオティワカン遺跡や人類学博物館、メキシコ国立自治大学、テンプロ・マヨール遺跡など様々な場所を訪れ、多くの学びを得ました。そして、親切で明るい人たちとのかけがえのない出会いをたくさん経験しました。
私たちはインターネット等の偏った情報を信じてしまいがちですが、この実習を通して実際に見て体験しなければ分からないことがあると知りました。「国」で一括りにするのではなく、その中に様々な人びとがいるということを忘れてはいけないと感じました。
語学学校修了式
テポストラン遺跡にて
テオティワカン遺跡
教育支援コース
教育支援コース総評
現地実習教育支援コースは、国際学群語学教育専攻において2007(平成19)年から実施され、本年度で11回目となった取り組みです。
この実習は、第一点目に、「地域の学校で教育ボランティアを行うことで、地域の教職員を補助し、貢献すること」、第二点目に、「大学の教職課程では学ぶことのできない学校の組織、学校が抱える諸問題、実践的な教授法等を理解すること」、第三点目に、「児童生徒とのふれあいおよび教師の指導に対する理解を深めること」、第四点目に、「職業における厳しさを体験することにより、責任感、自立心を育成すること」の四点を目的として行われているものです。
本年度は、8月28日(火)~9月21日(金)の間に、3年次の語学専攻学生3人が、3つの学校にて本実習に取り組みました(大宮小学校<渡久山 隼人さん>、羽地中学校<米澤 南華さん>名護高等学校<中川 悦之さん>)
実習生は、朝のあいさつ運動から、放課後の部活動まで教育実習生とほぼ同様のスケジュールを経験し、授業の見学や授業等での学習支援、体育会等の行事の補助、久志駅伝・地区陸上大会にむけた指導補助、学校内外の環境整備、放課後や週末の部活動指導の補助等、多方面にわたって学校を支援する取り組みを行いました。
実習後に提出されたレポートでは、「一人の教師が多くの子どもの学習指導を行う難しさ」、「学校現場で起こっている問題とそれへの対応」、「朝早くから夜遅くまで取り組む教師の姿」、「教師の子どもには見えないところでの努力」、「学校での業務の多さ」、「生徒たちとのふれあいから産み出される喜び」等々、それぞれの実習生が本実習を通して学び、感じ取ったことが報告されました。また、教職をめざす上での現状と課題を認識する貴重な機会となったことが報告されました。このような報告から、本実習が目的としていた諸点が一定程度達成されたことが確認できると考えています。実習生が、本実習で学び、考えたこと、感じ取ったことを総括し、今後、進むべき道を検討、決定することを望みます。
本実習中に、大変お世話になりました、各学校の校長・教頭先生をはじめとする教職員の皆様に深く感謝申し上げます。皆様のご協力によって実施することができた本実習を通して、実習生たちは大きな成長を遂げたと確信しております。
総評:板山 勝樹(国際文化教育研究学系 教授)
名護高校で学んだこと
中川 悦之(語学教育専攻3年次、岩手県・盛岡中央高校出身)
平成30年9月3日(月)から9月21日(金)の約3週間、沖縄県立名護高等学校にて実習をさせていただきました。私が本実習に参加した理由は、教員免許取得を目指すにあたり、教育実習より前に現場を体験することで、より具体的に自身が目指す教師像を形成できると考えたからです。
私は3週間で1年生から3年生までの学年を一クラスずつ担当させていただきました。1週間ごとに違うクラスと関わることで、学年ごとのクラス運営の違いや担任の先生によって違うクラスの雰囲気を体感することができました。また、授業やロングホームルーム(LHR)の見学、資料整理、印刷業務なども体験できました。特にLHRでは文化祭のお手伝いをさせていただき、生徒の皆さんと多く関わることができました。先生方のご指導と名護高校の生徒の皆さんの温かさのおかげで、楽しく充実した3週間を過ごすことができました。
実習を通して、授業以外の部分での仕事の大変さや生徒との関わり方を学んだだけではなく、生徒第一という姿勢をもち、生徒とともに考え、楽しむことができる教師像を思い描くことができました。名護高校で学んだこと、考えたこと、そして感謝を忘れず、今後の学習に励んでいきたいと考えます。