平成30年度第1回名桜大学リベラルアーツ機構FD研修会を開催
平成30年10月31日(水)、学生会館SAKURAUM大講義室Bにおいて平成30年度第1回リベラルアーツ機構FD研修会を開催し、教職員や研究員等80人にご参加頂きました。今回のFD研修会のテーマは「リベラルアーツ教育について」としました。本学の平成30年度計画に教育宣言「名桜大学型リベラルアーツ教育」の策定・公表があります。この計画の実現に向けて、改めて「リベラルアーツ教育とは何か」ということを確認しておきたいと考えました。また、リベラルアーツ教育に"名桜大学型"と冠するためには本学の取り組みを相対化する必要があると考えます。そこで上記のテーマのもと、他大学におけるリベラルアーツ教育の先進事例を把握し、年度計画の教育宣言の策定に対する合意形成、そして意見収集へと繋げたいということで本研修会を企画しました。
今回は、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院(Institute for Liberal Arts 以下、ILA)教授で副研究教育院長の室田真男氏をお招きし、ILAの取り組みを中心にリベラルアーツ教育の現状と課題についてお話し頂きました。
まず、グローバル化時代のリベラルアーツ教育には、他者との「対話」と主体的に学び続ける「志」が求められ、これを実現すべくILAが創設されたとのお話がありました。その後、ILAが実践している多様な教育内容を具体的に説明して頂きました。その中でも興味深かったのが、教養教育を学士課程から博士後期課程まで必修化した「くさび型教育運営」を実践している点、また、多様な教養科目とともにコア学修科目を設置している点です。
とりわけコア学修カリキュラムは特徴的でした。「東工大立志プロジェクト」(学部1年生必修)は600人規模の講堂講義と30人クラスとを連動させて展開していること。また、「教養卒論」(学部3年生必修)は教養の学びのまとめと専門学修の目標の明確化、ライティング能力の向上を目的としていること。前者は本学の「教養演習」、後者は「アカデミックライティングⅠ」とも共通する部分もありますが、本学と大きく異なるのは、これらの科目を大学院生が支援している点にあります。「学びのコミュニティ」を促進させるために大学院生アシスタントを育成する「リーダーシップ道場」・「ピアレビュー実践」・「リーダーシップアドバンス」などの科目が設定され、これらを履修した大学院生が「東工大立志プロジェクト」や「教養卒論」へファシリテーターやピアレビューアとして参画しているとのこと。修士・博士課程の大学院生が5,000人を超える東工大だからこそ実践できるのかもしれません(ただし、上述の大学院生対象コア学修科目の履修生が少ないことが大きな課題とのお話しもありました)。
本学の学習支援は、3学習センターを中心に学部生が学部生をサポートする体制が特徴となっています。研修会のアンケートには、「大学院生がほとんどいない本学では、東工大のような方法は難しいと思った」という意見を頂いた一方で、「大学院生も巻き込んだ教育体制はとても大切だと感じた」、「本学の大学院の改革にも大いに参考になる内容だった」という意見も頂きました。博士課程を設置した本学にあっては、現在の特徴を活かしつつ、大学院生も巻き込んだ学習支援の在り方も考えてゆく必要があるでしょう。
室田氏には他にも様々なお話しをして頂いたのですが、最も印象的だったのが、東工大の学生が変わったとの評価の声が多数あるということです。これは、様々な境界や壁を超えるため、まず自分自身を変えていくというリベラルアーツ教育の成果の現れと言えます。成果を遂げているILAの取り組みからは、教養教育の大切さを再認識した、本学でも応用可能な要素が多くあった、といった意見が多く寄せられました。これらの貴重な意見を「名桜大学型リベラルアーツ教育」の策定の参考にさせて頂きたいと思います。
最後になりますが、ご多忙の折に有益なお話をして頂いた室田氏、そしてご参加頂いた多くの方々に心よりお礼申し上げます。
報告:リベラルアーツ機構長 小番 達(国際文化教育研究学系 教授)
室田氏によるリベラルアーツ教育の現状と課題について | 室田氏の講演を傾聴する教職員 |