ケアリング文化実習
名桜大学看護学科1年次の最初の臨地実習として「ケアリング文化実習」があります。目的は、「沖縄の歴史や文化を継承しながら地域で生活する住民、特に高齢者や障がい者などとふれあい、彼らの人生や生活、地域の絆やケアリング文化を学ぶこと」です。沖縄の文化と看護の適応を考えるための、このような科目は他大学にはなく、貴重な科目であると自負しています。 「平和と歴史を学ぶフィールドワーク」では、6月23日の慰霊の日の前後に北部地域と読谷地域の戦跡めぐりを行い、過去から現在に至る平和について自身の考えを深めます。愛楽園見学実習では、元ハンセン病の方々の医療と歴史、偏見と差別、受け売りの情報の恐ろしさを学び、看護者として「その方々の歴史を知り、気持ちに寄り添う看護」の重要性に気づきます。また、地域で実施されている健康相談活動へ積極的に参加し、血圧測定などの身体測定を経験することで、自らの看護技術の未熟さやコミュニケーションの難しさを痛感し奮起します。さらに、北部12市町村の区長さんへのインタビューや地域行事へ参加することを通して、地域住民の絆の深さや伝統行事の重要性と継承の困難さ、地域の健康課題について学ぶことができていました。 戦跡めぐり このように、ケアリング文化実習は学生が地域に出向き、地域で生活している人々とふれあい、その思いをしっかりと受け止め、看護に適応する力を身につける貴重な実習となっています。ご指導・ご協力いただきました皆様に感謝申し上げます。
総評 高齢者在宅看護学:永田 美和子(看護学科 教授)
佐久川 政吉(看護学科 教授)
佐和田 重信(看護学科 准教授)
吉岡 萌 (看護学科 助手)
安仁屋 優子(看護学科 助手)
ケアリングを学んで看護師になるための一歩を踏み出す
ケアリング文化実習で前期から後期にかけて実際に地域に赴き、地域行事や朝市などの健康増進活動に参加し、普段の講義では学ぶことの出来ない貴重な体験をすることができました。戦跡巡りでは戦争があった事実を私たちが発信者となり語り継いでいかなければならないと実感し、愛楽園見学実習では元ハンセン病患者が受けてきた差別や偏見の苦しみを知ることができました。宮里朝市では健康支援活動の場は住民の集えるコミュニティとなり、健康の目標設定ができる場で、尚且つ地域住民にとって欠かせない場であることがわかりました。また、各地区での活動で私たちは国頭村A地区の敬老会へ参加し、お祝いには欠かせない豚の調理を手伝う機会があり、命の尊さや昔ながらの伝統行事を成功させるために住民が協力することの大変さや大切さを学びました。
ケアリング文化実習を通して人の繋がりや地域にある課題を見つめること、視野を広く持つことができました。1年次のこの時期に学ぶことで将来、対象となる患者さんを病気だけでなくその人の抱える背景や思いをくみ取ることの出来る看護師になれるのではないかと考えました。これからも地域に目を向け看護学生の自分に何が出来るかを考えていきたいです。
1年次 島袋 彩(沖縄県立名護高校出身)
基礎看護実習Ⅰ
基礎看護実習Ⅰは急性期病院や療養型施設での3日間の実習です。実習の目的は看護の実践現場において看護を必要としている人々に様子や、医療従事者の働きを観察し、どのような支援が行われているのか具体的な事実を通して理解するというものです。学生は「看護学概論」の講義で看護とはなにかを学んだ段階で実習に臨みます。臨床現場では実際に看護師のケアに参加しバイタルサインの測定や日常生活援助の場面などを見学します。その中で「看護師が体温や血圧を測定しながら、患者さんとの何気ない会話から患者さんの状態を観察している」ことや薬の配布の場面から「薬の名前を声に出し、指をさしながらしっかり確認して間違えがないように安全確認をしていた」など学生はよく観察し大切な視点に気づいていました。また、実習初日に患者さんとどのように会話をしてよいのか、患者さんの話していることがうまく聞き取れずに何を伝えたいのかなど戸惑う場面が見られました。実習カンファレンスで他の学生や臨床指導者、教員との振り返りを通し、解決の糸口を見出し翌日の実習に臨みます。戸惑いながらも実習を重ねることで患者さんとコミュニケーションが取れるようになり嬉しかったことや患者さんの思いがわかったことなど実習の達成感に繫がっていました。実習報告会では「実習では技術は何もできなかった。授業での知識や技術、コミュニケ―ンをしっかり学びたい」や「看護師は日々成長し続けられる仕事であり、やりがいのある仕事だと感じた」などの感想が聞かれました。3日間の短い実習ですが、学生は自己の看護観に気づき、これからの学習につながる学びをしていました。
総評:安里 葉子(看護学科 准教授)
~実習で学んだこと~
私が実習をさせていただいた愛楽園では、元ハンセン病患者の高齢者の方々が生活しています。彼らは過去に差別を受け、また社会からの隔離された経験をお持ちのため、実習中にそのような方々と接していくなかで、私自身のちょっとした一言が入居者を悲しませてしまうのではないかと不安に感じ、うまく言葉を発することができませんでした。そんなある日、看護者と入居者がその過去について共に話し合っている場面に立ち会った際に、入居者の過去に触れてはいけないと思っていた私にとって、看護者と入居者のこのような会話はとても不思議に感じました。しかし同時に、看護者は入居者の現状だけではなく、過去も理解し、受け入れたうえで看護を行っているのだと感じました。 今回の基礎看護実習を通して、看護者が患者自身を理解し受け入れることはとても重要なことであり、それは患者が自分らしく生きるためのサポートにつながるのだと理解することができました。私はこれから看護師を目指す者として、今回の学びを活かしながら、患者としっかり向き合っていきたいと思います。
1年次 與座望 (沖縄県立向陽高等学校出身)