沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)

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平成28年度入学式 学長式辞

掲載日:2016年8月22日学長室から

 本日、名桜大学は、学部学生522名、大学院生15名の新入生を迎え入れました。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。保護者、ご家族、そして関係者の皆様にも、心からのお祝いを申し上げます。また、ご多用なところご臨席いただきました来賓の方々に、名桜大学学長として厚く御礼を申し上げます。
 さて、ある詩人が、「自分がどこにいるのかわからないのであれば、自分が誰であるかわからない」と書いています。そこで、本日は、まずは私たちが現在いる場所について、手短にご紹介することから始めたいと思います。
 名桜大学は、沖縄本島北部の本部半島の付け根にある名護市の丘の上にあり、ここからは青く輝く名護湾と湾を取り巻くように連なる緑の山並みを眺めることができます。研究者によれば、「名護」という地名は、湾に囲まれた「おだやか」で「なごやかな」土地と関連があるようです。ですから、「名護」は「名古屋」という地名とも繋がりがあるという説もあります。日本の桜前線は1月中旬ごろ、本学周辺の丘や山から始まり、日本列島を桜色に染めて北上していきます。(本日は、福島や仙台あたりで桜が満開になっているようです)。沖縄北部には深い亜熱帯照葉樹林の森が広がり、今年の夏に国立公園に指定されます。近い将来、ここを世界自然遺産として登録する準備も進んでいるとマスコミが報じています。また、本部半島から最北端の辺戸岬までの西海岸は、沖縄海岸国定公園に指定されています。沖縄本島の東海岸は太平洋、西海岸は東シナ海に面しています。名桜大学は東シナ海に面していますが、この海を世界最大規模の海流の一つである黒潮が流れています。フィリピン周辺から北上してくる黒潮は、九州の南のトカラ海峡から太平洋に拡散していきます。その一部はフィリピン海に南下し、そこからふたたび北上し、台湾と石垣島の間を抜けて沖縄諸島へと還流してきます。亜熱帯の光が降り注ぐ沖縄の珊瑚礁の島々は、悠久の昔から、黒潮と太平洋の出会いから生まれる美しい海、<ちゅら海>に育まれてきたのであります。
 21世紀のいま、沖縄には日本国内だけでなく、中国、台湾、韓国、その他多くの国々から観光客が訪れるようになりました。本部半島や沖縄北部地域は、いまや沖縄観光の中心地の一つになっています。私は、本学は、美しく豊かな自然に囲まれた、教育研究に集中できる理想的な場所にあると考えています。実際、世界の多くの大学はこのような自然の中にあります。新入生の皆さん、あらためて、名桜大学へようこそ。沖縄北部の自然を満喫しながら、大きく学んでください。
 さて、名桜大学の教育の大きな特徴のひとつは、「名桜型リベラルアーツ教育」と呼ばれるものです。それは、専門分野だけを深めるだけでなく、多様な分野を柔軟に学び、創造的に思考し発想することができるように設計された教育です。liberal artsとは「自由人にふさわしい学芸」を意味します。名桜大学では、このような概念を発展させ、「自由に、批判的に、創造的に考えること」を教育の基本的な目標としています。
 21世紀は、あらゆる情報が洪水のように個人の世界に押し寄せる時代になりました。そのような情報を適切に選り分け、正確に分析・評価し、行動できるかどうか。私たちには、問いかけ続け、批判的に思考し、深い分析を行い、自らの言葉で世界を表現することが要請されています。このような学びの中から、幅広い教養と深い専門性を併せ持つ国際社会で活躍できる人材、そして同時に地域社会にも大きく貢献できる人材が育っていくと私たちは考えています。
 大学は、知識だけを蓄積する場ではありません。大学の学びの基本は、物事の表層を越えて批判的に思考をかさね、探求を続けることにあります。そして、そのようなプロセスの中で学んだ知識や思考方法に基づいて、他者と対話を続け、社会や世界をより良い方向に変えていく力を獲得する場が大学です。このような力こそが、生涯を通して個人を支え、豊かな人生を築いていく力になります。
 大学は、また、<自らにチャレンジする場>でもあります。チャレンジは、周知のように「挑戦する」ことや「なにかに挑戦するように促す」ことを意味しますが、同時に名詞としては、「人間の有する能力が最大限に試される物・事」という意味もあります。ですから、<自らにチャレンジする>ということは、自らの力や可能性を真剣に試し、自分の中にある潜在力や能力を最大限に発揮するということを意味します。大学は、学生が自らにチャレンジしながら真理を追究する中で、まちがったり、遠回りしたりする自由を保証します。大学で学びながら、チャレンジするもの・ことと出会うことで、皆さんは自分では気づかなかった能力を発見し大きく成長します。
 名桜大学では、新入生の皆さんが新たな次元へと飛躍できるよう、さまざまな準備をしています。例えば、新入生全員が、必修科目である「大学と人生」、「論文作製法」、「教養演習」を履修します。このような科目を1年生全員に必修として課している日本の大学は多くはありません。このような科目を履修することで、皆さんは国際的な知のコミュニティで通用する、国際基準のルールやマナーを学びます。ここで皆さんは一気に大学の学びの世界へと導かれ、普遍的な学問の世界に足を踏み入れることになります。
 また、学生の学びを支援するために、本学には言語学習センター、数理学習センター、ライティングセンターの3つの特色ある学習センターがあります。これに、近いうちにICT(通信情報技術)関係のセンターを加える予定です。このような学習支援センターを揃えていることも、本学の誇るべき特色です。このような大学は日本全国の大学でも多くはありません。  
 3つのセンターでは、専任教員とともに、先輩の学生チューターたちが学生の学習を支援するという仕組みになっています。このようなセンターとチュータリング制度は、本学の特色として全国公立大学教育改革フォーラムや月刊誌の『文藝春秋』などで紹介されました。
 さらに本学では、教員は教壇から教えるだけでなく、学生が主体的に学びを深めるように指導しています。これをアクティブラーニングと言います。大学は21世紀になって大きく変わりました。学生の主体性を信頼することに教育の重点を移していく、いわゆる「高等教育のパラダイムシフト」が起こっているのであります。本学の6階建ての学生会館サクラウムは、このような教育を象徴するものになっています。サクラウムは特色ある先端的な大学施設として、最近、文部科学省の刊行物で全国に紹介されました。
 本日から、学部の新入生、大学院の新入生の皆さんのチャレンジが始まります。皆さんがどれだけ高い志を持って自らにチャレンジし、自らを成長させることができるか、学長として皆さんにチャレンジしたいと思います。本日、名桜大学に入学した皆さんが、大学での学びを楽しみながら、新しい自分を発見し、大胆に、そして果敢に、未来に向かって飛翔することを期待して、学長式辞といたします。  

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