平成28年7月4日の学長講座「大学と人生」では、ゲスト講師として落語家・立川志の春氏をお招きし、「日本の笑いを世界へ」と題した講演会を実施しました。立川氏は千葉県の高校を卒業後、アメリカの名門・エール大学に進学され、同大学を卒業後に日本有数の商社である三井物産に入社されました。しかし、入社3年後に偶然聴いた落語に大きな衝撃を受け、落語家になることを決意。会社を退職され、26歳の時に落語家に転身しました。
当初は安定した職を捨てて芸の道に進むことをご家族全員が反対されたそうですが、自身が信じる道を進むということだけではなく、「笑い」を通じて他者を癒し、生きる勇気を与えることにやりがいを見つけ、目標を実現された氏の話は大きな感動を呼びました。それは、「有名大学・有名企業に入り、高収入を得る」ことが大学で学ぶ目的になるべきではないことを伝え、「大学・人生の何に価値を見出し、どう生きるのか」について、講演を聴いた学生の眼を開かせるものであったからといえます。
ちなみに、立川氏の母方の祖父は沖縄出身で糸数姓を名乗っていったとのことで、筆者は講演前日に立川氏を糸数城址に案内しました。祖先が居住されていたと言い伝えられる糸数城址に立たずみながら感無量の様子の立川氏を見て、友人として、今回招へいすることができ嬉しく思いました。
講演では立川氏の見事な英語落語も披露されました。山里学長も、「志の春さんの切れ味鋭い知性」の中に「21世紀の日本の知性の姿を見た」との感想を述べられ、伝統文化が言語を越えて笑いにいざなってくれる普遍的な価値を持つものであり、日本の笑いから世界的な知のあり様を考えることの面白さを示唆されていました。改めて、本学の学生に大きな刺激と笑いを与えてくれた立川氏に心から感謝の意を表したいと思います。
国際文化教育研究学系 上級准教授
菅野敦志
立川氏の落語に聴き入る学生 | 英語落語を披露される立川氏 |