平成27年10月23日(金)から11月7日(土)までの約2週間、スペインのムルシア州で現地調査を行ってきました。11月2日は「死者の日」といって、スペインや南米諸国などカトリックを信仰する地域では墓参りが行われます。ムルシア州ではこの日、墓地に多くの人々が訪れ、墓前にはカラフルな花々が供えられて、まるで祭りのような賑わいとなります。そしてどこからか、アウロロの歌声とハンドベルの音が聞こえてきます。
アウロロとはカトリック教区内の男性信者で組織された合唱団で、死者の霊魂のために歌と祈りを捧げるグループです。煉獄で苦しんでいる死者の霊魂のために歌と祈りを捧げることによって、霊魂は救われると考えられています。この起源は10~12世紀頃、フランスのクリュニー修道会の修道士による死者への執り成しの祈りにあるとされます。後に、この執り成しの祈りが拡大解釈されていき免罪符へと発展したといわれています。
また、「死者の日」が近づくと、雑貨店では「マリポサ」と呼ばれる水に浮かべる小さなキャンドルが売られます。「死者の日」の前夜には、死者の霊魂が家に戻ってくると考えられており、死者が休むためのきれいなベッドが用意され、水を張ったお皿に火を灯した「マリポサ」が浮かべられます。その小さな灯りが水面に揺れると、死者が訪れた合図と考えられています。
アンデス地域の死生観を研究している筆者が今回なぜ、スペインで調査を行ったかというと、実はアウロロによく似た習慣がアンデスの一部地域にも存在するからです。今回は両地域の比較研究ということで「総合研究所 平成27年度新規採用者助成」を受けて現地調査を実施いたしました。今回の調査で得たデータをこれから比較分析し、アンデスについての研究をより深化させていきたいと考えております。
上原 なつき(国際学群 国際文化教育研究学系 准教授)
墓地で歌うアウロロの男性たち |
花が供えられた墓の様子 |