MEIO COOL HEALTH PROJECT
健康長寿を愉しもう!健やかなスーパーセンテナリアンへ
近年、日本人の寿命は飛躍的に伸び、80歳以上の高齢者は1000万人、100歳以上は6万人以上になったといわれています。さらに今後、医科学の進歩とともに、「スーパーセンテナリアンといわれる110歳を超えるスーパー百寿者」が多くなる時代が幕を開けようとしています。これまで世界で2500人くらいしか誕生していなスーパーセンテナリアンですが、その中でこれまで確証のある世界最高齢者は、1997年に122歳164日で死去したジャンヌ・カルマンさん。男性の最高齢者は2013年に116歳54日で死去した木村次郎右衛門さんとなります。この二人に共通することは、年齢を重ねても元気だったということです。医科学の力に頼ることなくスーパーセンテナリアンになるにはどうしたらいいのか?また、一方では今後、医科学の進歩により人の寿命はどこまで伸びるのか考えてみます。
いくら長生きするといっても、要支援や要介護の状態で長く生きるのは望まれた状態ではありません。人の寿命は医科学の進歩により確実伸びているが、片や寝たきりや認知症などの問題(介護寿命の延伸)により、長寿の"寿"の状態とは決していえない状況も多くなってきています。ピンピンコロリという言葉に形容されるように、これからの時代長生きできる時代が来ると言っても、日常的に介護を必要とせず、元気で自立した状態で長寿を全うすることが重要なのです。
健康長寿をむしばむ3つの壁
健やかに歳を重ねて健康長寿を愉しむためには、健康長寿をむしばむとされる3つの壁を乗り越えていく必要があります。3つの壁とは、①ガン・心疾患・脳血管疾患である三大生活習慣病、②骨粗鬆症・変形性関節症などに代表されるロコモティブシンドローム(ロコモ)、③認知症のことを指し、これらを予防するためには「規則正しい生活習慣」「栄養バランスのとれた食事」「日々の運動習慣」が大切となります。またスーパーセンテナリアンといわれる方々は、100歳を越えた時点でもこれらの3つの壁とは無縁であったといわれています。Handschin and Spiegelman(2008)は、ガン・動脈硬化・糖尿病・認知症などの病気の原因を作るのは、「不活動な生活と肥満がセット」になることで起こることを述べ、この場合60歳後半の時点において50%の人が重篤な疾患にかかるとしています。やはり病は生活習慣が関連しているということです。
進む科学
人の体内にはサーチュインと呼ばれる長寿に関係する遺伝子が7つ存在し、この遺伝子が働いている状態になれば細胞の寿命が驚くほど長くなることが分かっています。サーチュイン遺伝子群は、腹7分とか8分の食生活を心がけることで活性化するほか、レスベラトロールやNMN(βニコチンアミドモノヌクレオチド)などの化合物の摂取でも活性化され、老化の速度を遅くすることが明らかにされようとしています。NMNに関する研究は、正に先端的な研究として現在進められていて、このようなNMNに代表されるような人の寿命を飛躍的に伸ばすことができる可能性をもつ化合物の力により、「125歳」くらいまで病気を遠ざけ元気に生きられる時代が正に到来しようとしています。確かにありがたい話ではあるのですが、しかし、このような化合物に頼ることなく、人本来の力で健康長寿を実現することがやはり大切であり、少なくとも過去のスーパーセンテナリアンの方々は、現代の科学とは無縁の力で健康長寿を愉しんできた事実があります。
100歳以上の長寿者はどのような生活習慣なのでしょう?
9割以上の人が1日3食きちんと食事をし、よく動き、夜もぐっすり眠れる。食事の内容では、9割近くの人が野菜、果物を欠かさず食べており、食物繊維・ビタミン・ポリフェノールなどをしっかり摂取しています。好きな食べ物のトップは果物。また、肉を食べる習慣はほとんどなく(内陸部では肉も多い)、魚を毎日のように食べています。好きな食べ物でも魚が2位に入っています。その他、イモ類、キノコ類を好んで食べる習慣が特徴的です。メンタル面でも、6~8割の方が自分が健康だと感じたり、毎日気分良く過ごしています。周りとの人間関係が上手くいっていると答えた人も7~8割以上にのぼります。規則正しい生活やバランスの取れた食生活、気持ちよく生活することが健康長寿の秘訣といえます。
サーチュインの活性から少食は長生きにつながるとされますが、問題もあります。それは栄養のバランスです。例えば加齢によるロコモを遠ざけるためにも、たんぱく質やカルシウムの摂取はとても大切になってくるのですが、少食の場合はこれらの栄養素が不足し、それが筋量の大幅な減少や骨粗鬆症を招くことに繋がるのです。やはり、健康長寿には「規則正しい生活習慣」「栄養バランスのとれた食事」「日々の運動習慣」が大切であり、それにプラスし"生きがいをききちんと確保"することが健康長寿を愉しむことにつながるのです。夢か現か幻か?若いうちからそのような生活習慣が形成されれば、健やかなスーパーセンテナリアンも決して夢でも幻ではないと考えます。
引用・参考文献:Handschin C, Spiegelman BM.The role of exercise and PGC1α in inflammation and chronic disease.Nature. 2008 Jul 24; 454(7203): 463-469.
健康・長寿サポートセンター長 高瀬幸一(人間健康学部スポーツ健康学科教授)