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「高齢者の人権と倫理的課題~身体拘束をめぐって~」をテーマに3月1日(土)に第5回高齢・在宅ケア情報交換会が行われました。平成22年厚生労働省研究班の調査によると特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、認知症対応型グループホームの介護施設で「身体拘束」を受けている高齢者の割合は、3万3千人(3.1%)で、拘束されている人の少なくとも約8千人(20%)は緊急性や必要性に乏しい身体拘束であるとのデーターもあります。最初に身体拘束の現状について佐和田助教より話題提供をした後に、ニュースでも取り上げられた某病院での身体拘束をされる認知症高齢者の惨状を伝えるビデオを視聴し、身体拘束の現状についてディスカッションを行いました。
ディスカッションの中で「身体拘束は行わない」という理念のもと、高齢者ケアを行っているものの、現状のマンパワーでの対応の困難さ、非薬物療法の限界、家族の協力体制、一次的な拘束に対するスタッフのジレンマ等多くの課題がありました。また、認知症の方の周辺症状や転倒予防のために必死にケアする現状と疲弊していくスタッフの課題もありました。周辺症状がなぜ出現するのか、効果的な薬物の使用の検討、マンパワー確保などディスカッションを行いましたが結論を出すには至りませんでした。一方、上記調査結果のように身体拘束が認められる切迫性、非代替性、一時性の3要素を満たさない身体拘束もあります。私たちは医療・福祉従事者のプロフェッショナルとして、患者の人権を尊重し、倫理観を持って考え続けなければいけない問題であることを再認識した情報交換会でした。継続してディスカッションしたいと思います。
最後にイタリアの研修報告では永田准教授よりイタリアの高齢者医療、在宅ケアの現状、小さな町のトレヴィゾのボランティアを中心としたホスピスケアについて報告がありました。
次回は、5月17日(土)14:00~16:00を予定しています。
今回参加できなかった多様な職種の方々の参加をお待ちしております。
主催:看護実践教育研究センター
高齢・在宅ケア領域: 稲垣絹代 永田美和子
佐和田重信 八木澤良子