沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)

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平成31年度 名桜大学入学式 学長式辞

掲載日:2019年4月15日学長室から

 本日ここに、学群・学部学生506名、助産学専攻科6名、大学院生13名の、計525名を迎え、2019年度入学式を挙行するにあたり、新入生諸君ならびに御家族と関係者の皆様に対し、心からお慶びを申し上げます。また、本日は公務ご多用にもかかわらず、入学式に御臨席賜りました本学の設立団体であります北部広域市町村圏事務組合理事長の渡具知武豊名護市長をはじめ、北部12市町村の市町村長の皆様、議会議長の皆様、教育長の皆さま、名桜大学後援会長ならびに同窓会長、そして御来賓の皆様に名桜大学学長として厚く御礼を申し上げます。

 さて、名桜大学は、1994年、公設民営の大学として設立され、2010年に公立大学として生まれかわりました。ですから、2019年、本学は創立25周年、公立大学法人化10周年を迎えます。本学には、国際学群、人間健康学部、助産学専攻科、そして国際文化研究科と看護学研究科の2つの修士課程がありましたが、本年4月1日に新たに博士後期課程「国際地域文化専攻」が開設され、本日、博士後期課程一期生5名が入学いたしました。博士後期課程は大学における最高水準の教育と研究を行い、博士号を授与します。公立大学の使命は、教育、研究、そして地域貢献であります。開学25周年、公立大学法人化10周年を迎える記念すべき年に博士後期課程を開設し、大学として三つの使命をより高度に推進する体制を整え新入生を迎え入れることができますことを、皆様と共に喜びたいと考えております。

 本学の教育の特色は、「平和・自由・進歩」という建学の精神を反映するリベラルアーツ教育を基盤とし、それを学部と大学院の専門教育に統合するよう設計されていることにあります。リベラルアーツ教育とは、人文科学、社会科学、自然科学を幅広く横断的に学びながら、批判的・論理的に考え、知的倫理性を実践することを目的とした教育です。また、本学では、(主として母語による)文章力、数理分析能力、外国語力、そしてICTリテラシーの4つを基礎にして全学のカリキュラムを設計しています。さらに、本学の大きな特色は、このような学びを具体的に支援する施設を整備していることです。例えば、既存の言語学習センター、数理学習センター、ライティングセンターに加え、本年2019年に「ICT情報学習支援センター」(仮称)が新しく設置され、4つの学習支援センターが揃います。このような4つの学習支援センターを揃えた大学は県内では本学だけであり、日本全国でも多くはありません。学生会館「サクラウム」とともに、名桜大学の先駆的かつ顕著な特色として全国的に知られるようになり、毎年、全国から視察団が訪れるようになりました。

 名桜大学は、体系的なカリキュラムによる教育と4つの学習支援センターを連携させながら、「国際教養人」、「国際社会で活躍できる人材」を養成します。このような人材は、これからの日本でますます必要とされるようになることでしょう。21世紀の世界は激動の予感に満ちています。例えば、日本では、今月から在留資格「特定技能」を取得した外国の労働者が入国できるようになりました。50年後には、1500万人の人々が日本に移住しているという試算もあります。このことは、これから大学で学ぶ人たちは、21世紀の日本社会で責任あるリーダーとして活躍することが期待されていることを意味します。グローバルな人の移動については、いま世界中で議論され、大きな葛藤も生まれています。しかし、移動する人々は新しい文化をもたらし、社会を活性化する人々でもあります。私たちは移動してくる人々との共生のあり方を学ばないといけません。

 このことに関連してすこしお話したいことがあります。沖縄には「いちゃりばちょーでー」ということわざがあります。「行き逢えば兄弟姉妹」、あるいは「一度出会えば兄弟姉妹」という意味です。これは平和共生を求める寛容な生き方を示唆するものであると言って良いでしょう。しかし、グローバル化とともに到来する多文化、多民族、多言語社会での身の処し方は、これよりさらにもう一歩踏み込んでいく必要があるかもしれません。

 一昨年、大学間交流協定の調印のためにボリビアの国立大学を訪問しました。その際に沖縄から移民した人々が住んでいる「コロニア・オキナワ」を訪ねました。「コロニア・オキナワ」は戦後に沖縄から移民した人々が開拓した土地ですが、農作物の収穫前に何度も洪水に襲われ、疫病も発生し、多くの方々が亡くなりました。「コロニア・オキナワ」の人々は筆舌に尽くしがたい苦労をしたのですが、いまでは成功して安定した生活をされています。

 その「コロニア・オキナワ」で教えていただいたことですが、ボリビアに移民された方々は、「いちゃりばちょーでー」(行き逢えば兄弟姉妹)ではなく、「いちゃいどぅめーからちょーでー」を合言葉にボリビア社会に適応し、受け入れられたとのことでした。「いちゃいどぅめーからちょーでー」とは、「行き逢う前からすでに兄弟姉妹」という意味です。一歩踏み込んで、伝統文化をしなやかに変えていく生き方、積極的な身の処し方が社会の信頼を勝ち得て、ボリビアに移住した人々は成功したのでありました。「いちゃいどぅめーからちょーでー」(「行き逢う前からすでに兄弟姉妹」)――21世紀の日本社会にとって示唆に富む言葉だと思います。北は北海道から南は石垣島まで、そしてアジアや南北アメリカから多様な文化背景を持った学生が集まる名桜大学は、これからの新しい社会について学ぶ場でもあります。

 しかしながら、大学では待っているだけではなにも生まれません。「鉄は熱いうちに打て」(Strike while the iron is hot)という言葉があります。これはもともと英語のことわざで、「チャンスを逃すな」、「好機を掴め」という意味ですが、この言葉をさらに一歩進めて、「鉄が熱くなるまで待つのではなく、鉄は打って熱くせよ」 (Do not wait till the iron is hot; but make it hot by striking)という格言もあります。これは、アイルランドのノーベル賞詩人ウィリアム・バトラー・イェイツの言葉ではないかと言われていますが、アメリカのノーベル賞作家アーネスト・ヘミングウェイが最初に言ったという研究者もいます。が、肝心なことは、この格言が「いちゃいどぅめーからちょーでー」と同様に、通念にとらわれることなく、一歩踏み込んでしなやかに発想し、積極的に行動することが大切だということを教えているということです。

 大学は人類の知の伝統の最先端で学びながら新しい知を創造する場です。大学は、また、自らを律しながら自分を鍛え、自分を「打って」熱くし、自らを高めていくところでもあります。「学生」とは「学問をする人」のことを言います。そして、大学での学び、学問の世界に限界はありません。

 2019年、学群、学部、専攻科、大学院に入学した皆さんが、名桜大学の新しい知の世界で躍動することを期待して、学長式辞といたします。

2019年4月4日 名桜大学学長 山里勝己

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