沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)

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ボリビア・ブラジル訪問記

掲載日:2018年5月28日学長室から

 2018年2月26日(月)から3月10日(土)の日程で、国際交流協定を締結するため、ボリビアとブラジルの2カ国を訪問した。住江淳司学長補佐兼国際交流センター長、金城正英事務局長、中山登偉国際交流課長が同行した。本学の国際交流の特色の一つは南米との長い交流にあるが、そのような交流を中心になって推進してきたのが住江淳司学長補佐兼国際交流センター長だ。北米の簡素な手続きに慣れている私には、南米への渡航までの手続きは時間がかかりたいへん煩雑に感じられたが、住江学長補佐に十分に時間を取って準備していただき、手続きを完了し出発することができた。中山課長は学生の受け入れや送り出しに尽力してきたので南米との大学間交流を熟知し、今回も事務的な手続きの準備をしてきた。金城正英事務局長は、これまで本学の企画戦略に力を発揮し、大学運営や将来構想等を担当してきた。

 最初はボリビアに飛び、2月28日(木)の午後、サンタクルス市にあるガブリエル・レネ・モレノ国立自治大学を訪ねた。オスワルド・ウリョア・ベニヤ副学長や同大学の関係者、そして沖縄県人会の関係者が出席し、同大学と名桜大学間の学術交流と学生交流に関する協定書に署名した。調印式の後は、レイネリオ・バルガス学部長の案内で人間健康学部を視察し、6人の教員と名桜大学の人間健康学部看護学科との共同研究について意見交換を行った。

 1880年に開学した同大学では、現在約10万5千人が学んでいる。ボリビアを代表する伝統校のひとつであり、同大とは本学が開学した1994年に初代学長の東江康治先生が国際交流協定を締結している。しかしながら、2000年以降、諸般の事情で協定の更新ができず、同大学とは交流が途絶えたままであった。したがって、今回は実に18年ぶりに交流協定を再締結したということになり、中南米における本学の交流協定校はこれにより5カ国6大学となった。同大学との学生交流は、2019年度前期から再開予定で、他の南米協定大学と同様に、本学から同大学への派遣留学生と同大学から受入れる留学生の双方とも、旧県立農林学校同窓会からの寄付金を活用した本学独自の奨学金制度の支援対象となる。

180310internationalexchange1.jpgガブリエル・レネ・モレノ国立自治大学の調印式にて。ベニヤ副学長(左)と山里学長(右)

 今回、ガブリエル・レネ・モレノ国立自治大学との協定を再締結した背景には、沖縄からのボリビア移民の歴史に対する思いがある。沖縄での地上戦の後、米軍に土地を接収されたり、海外や県外から多くの帰還者たちがあったため、「人口過剰」を解消する政策の一環として、アメリカ民政府と琉球政府は沖縄から南米への移民を奨励した。その中でも、ボリビアに移民した人々は、「楽園」のイメージとはほど遠い密林への入植を強いられ、想像を絶する体験をしている。入植してまもなく、疫病で多くの移民が死亡し、収穫寸前にリオグランデ川の洪水により作物を失うという試練を味わっている。コロニア•オキナワの資料館の写真を見ると、初期の移民たちがボリビアの大地に溶け入って生活を築き、多くの苦難に耐えて今日の発展を成し遂げたことがよく理解される。

 コロニア・オキナワでは、仲村会長をはじめ役員の皆様と長テーブルで向かい合って昼食をとりながらいろいろと話し合いをすることができた。その中で、仲村会長は、沖縄からの人々が「銭(じん)し買(こ)うてーるむん(<苦労して稼いだ>銭で買ったものなのだから)」ということを合言葉に、倹約しながら堅実で安定した生活を築きあげた話をされた。また、ボリビアでは、「いちゃりばちょうでー(出会えば兄弟)」ではなく、「いちゃいぬ前(めー)からちょーでー(出会う前からすでに兄弟)」という気持ちで他者に接していると教えていただいた。多様な文化が接触・融合し、多様な人種が共生する南米で生き抜いていく上で沖縄の知恵が磨かれ、広い普遍性をもつ文化となって成熟していると感じた次第である。

180310internationalexchange3.jpgボリビア沖縄県人会との懇親会

 現在、コロニア・オキナワのほぼ全員のオキナワ系若者が大学に進学し、生活も安定しているとのことであった。沖縄文化会館に通じる道の両側には沖縄から持ってきたという美しい赤木の並木があり、会館入口の正面には大きな蘇鉄が植わっていた。また、コロニア・オキナワには大きなパスタ工場があり、サンタクルス市地域にパスタを供給し、コロニア・オキナワで生産される米はフランド品として高い評価を得ているとのことであった。

 ボリビアの亜熱帯の原生林を切り開き、大地に自らの生活の場所を築き、異国で安定した生活を確立した人々の誇りが仲村会長や役員の皆様の言葉や表情からうかがい知ることができた。この人々の子弟が、本学の奨学制度で学び、ボリビアと沖縄を結ぶ絆となることを期待したい。ガブリエル・レネ・モレノ国立自治大学とは、奨学生の選考に県人会のメンバーが参加することを確認している。

180310internationalexchange4.jpgボリビアオキナワ移住地の玄関

 ボリビアの後、現地時間3月5日(月)の午後、ブラジルのロンドリーナ市に到着した。空港では、名桜大学に留学した学生たちや沖縄県人会の皆様から熱烈な歓迎を受け、恐縮すると同時に深く感謝した。翌3月6日(月)の午後、ロンドリーナ州立総合大学で、同大学のベレニッセ・キンザニ・ジョルダン学長と、5年間有効の学術文化交流協定書に署名した。同大学は本学の最初の海外協定校であり、1994年に東江初代学長が協定書に署名して以来、本学と同大学間で現地実習プログラムや学生同士の派遣・受け入れがあり、活発ですばらしい交流が続いている。ちなみに過去10年間の交流実績を見ると、本学の学生26人がロンドリーナで、ロンドリーナの学生18人が名桜大学で学んでいる。

180310internationalexchange5.jpgロンドリーナ国際空港で沖縄県人会からの熱烈な出迎え

180310internationalexchange2.jpgロンドリーナ州立総合大の調印式にて。山里学長(左)とジョルダン学長(右)

 ロンドリーナ市は、最初はイギリス人により開拓され、それからドイツと日本の移民がつくり上げてきた街だと聞いた。街の姿がボリビアやペルーやメキシコで見た光景とはすこし違っていて、どちらかというと北米の光景に近く、ラテン的というよりはアングロサクソン的な雰囲気をあわせ持った市街地である。歴史的背景を聞き、なるほどと感じたのであった。高層ビルが立ち並び、清潔でよく設計された近代都市のロンドリーナは、名護市の姉妹都市でもある。

 キャンパスは自然を生かした設計になっている。キャンパスの一角にはかつてのブラジルの原生林の姿を留める大木や下生えが保存されている。静かで快適、学ぶにはすばらしいキャンパスだ。そのような緑深いキャンパスの中に、名護市から寄贈された日本文化会館があった。館長室、キッチン、資料室、そして授業に使われる小さな部屋が3つほどの小さな建物であるが、じつによくできた建物である。特に、5人から10人ほどの学生が集中して授業を受けることができる小教室は、私自身がそこで授業を受けてみたい、勉強してみたいと思わせるような魅力あふれる空間であった。そこで日本語や日本・沖縄文化を学んだ学生たちが、本学に留学してさらに語学や文化や歴史について学びを深めてきたのである。

 今回の訪問で、本学の中南米諸国の大学との国際交流協定は、現地の県人会なくしては到底実現できなかったということを深く実感することができた。最初の交渉から調印式に至るまで、現地の沖縄県人会による物心両面の献身的な協力があった。たとえば、ボリビアついて言えば、再調印に向けて3年前から現地調査と交渉を始め、協定書作成に関しても8カ月に及ぶ現地大学との粘り強い交渉を支援していただいた。(これについては、なによりも住江学長補佐の粘り強いお仕事に負うところが大きい)。

 ロンドリーナでは、沖縄県人会は空港での出迎えだけでなく、日本国総領事、ロンドリーナ市長、それにロンドリーナ州立総合大学学長を招き、ロンドリーナ在住の300人余の沖縄県人の方々による歓迎会を県人会館で開催していただいた。かつて名桜大学で学んだ学生たちは、名桜エイサーで私たちを歓迎してくれた。また、大学も案内してもらったが、彼ら・彼女らのすばらしい日本語を聞きながら、交流の意義をしっかりと確認できて誇らしい気持ちになった。ボリビアでもそうであったが、ロンドリーナ沖縄県人会の歓迎会とあたたかいおもてなしは、いまの沖縄が忘れてかけているチムグクルとはこのようなものであったかと、あらためておしえていただいたような気がしたのであった。世界に拡散し、試練を乗り越え、粘り強くオキナワ・ディアスポラを築いてきた方々に深い敬意を表したい。そして、その子弟を迎え入れ、ホームランドで沖縄や日本文化に関する高等教育の機会を提供しながら、未来に向けて絆をより強めることが私たちの使命であり、このひとびとの労苦と成功に敬意を表することになるのであろうと感じた旅であった。

180310internationalexchange6.jpgロンドリーナ市沖縄県人会館での歓迎式典にて

最後に、名桜大学からの訪問団に対してあたたかいご支援をいただいたガブリエル・レネ・モレノ国立自治大学とロンドリーナ州立総合大学の関係者、そしてサンタクルス・ボリビア沖縄県人会とロンドリーナ沖縄県人会の皆様にこころからの感謝を申し上げ、今後の交流がこれまで以上に充実したものになることを願いつつ、報告としたい。

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